第51回研究委員会 平成11年5月14日
IJ- 9-99
拡散接合部引張り破面のフラクタル解析」
東京工業大学 工学部  池庄司敏孝,岡田隆寿、鈴村暁男

 拡散接合したSUS304ステンレス鋼の低温引張強度を調べるとともに,破面のフラクタル解析を行った.一部の試験片には直径はφ200μm程度の孔を約500μm間隔で穿ち,人工的に欠陥を導入した.低温引張試験は液体窒素中(77K)で行った。継手の引張り強さは母材の常温引張り強さの約2倍の値を示した.また人工欠陥は低温における継手強度を低下させた.破面には巨視的に脆性的な平坦な表面形状が観察されたが,微視的には微小なディンプルが覆う延性破面が認められた.この巨視的,微視的様相の違いがフラクタル次元のスケール依存性に反映し,数マイクロメータースケールを境に巨視的には約1.6,微視的には約1.2のフラクタル次元値が得られた.この境界値は結晶粒径に対応すると考えられる.人工欠陥の間隔はスケール依存性と無関係だった.これらの結果は,フラクタル次元のスケール依存性から介在物や空隙の分布を概算できる可能性を示唆するものである.

IJ-10-99
渦電流法コンダクティビティ顕微鏡によるAl/Cu圧接界面の観察」
理化学研究所 山崎敬久、青野正和

 半導体集積回路における異材接触部の界面電気物性を調査するため、走査型トンネル顕微鏡と組み合わせて使用できる鉄心入り微小ソレノイドコイルによる非接触走査型電気抵抗測定装置の開発を行っている。ピエゾドライブ機構でこの微小ソレノイドコイルを走査し、渦電流法にて良導体のAl/Cu冷間圧接界面の電気伝導性を調べた。接合部の軸付近では1000nm幅で電気伝導性が悪化していた。この試験片を470Kで1時間熱処理すると電気伝導性はAlからCuへと連続的に変化するようになった。また界面に化合物層が形成されていることも検出された。

IJ-13-99
超耐熱酸化物分散強化合金のパルス通電焼結接合現象」
大阪大学工学研究科 才田一幸、都筑亮一

 酸化物分散強化型(ODS)合金は超合金マトリックスに微細酸化物粒子を分散させた非常に優れた高温機械的特性を有する超耐熱合金である.しかしながら,ODS合金を溶融接合した場合,接合部における酸化物の均一分布が失われる等の原因により接合継手特性の劣化が著しいという問題点がある.本研究では,近年注目を集めているパルス通電焼結接合法を用いてFe基およびNi基ODS合金のその場焼結接合を行い,接合現象・機構の解明を行うことを目的とした.本講演では,ODS合金のパルス通電焼結接合挙動の解明と接合部の組織解析を実施した結果について述べられた.

IJ-14-99
溶射とその表面改質への応用」
トーカロ(株) 谷 和美

 素材で構成された機械,機器部材の表面に異なる材料特性を付加して外環境と接触する部分の性質を変化させその表面機能を向上させるのが表面改質技術である.昨今は素材に対する種々の負荷要求が大きく,これらの支援要素技術も現代産業基盤を支える必須技術のひとつとなっている.溶射法は近年そのプロセスの急速な成長に支えられて皮膜性質の
向上,信頼性の付与が図られ「表面機能」の付与手法として台頭している.ここでは直流プラズマジェットおよび高速ガス炎熱源に焦点を絞って溶射プロセスの概要を述べるとともに,それらで形成した溶射皮膜の工業的応用事例のいくつかが紹介された.

IJ-15-99
溶射被膜のエロージョン特性」
(株)東芝 斉藤正弘、高橋雅士、高石和年、稲垣泰造、渡邊俊寛

 超高速ガス炎溶射は、水車部品の耐土砂摩耗性向上のために開発されたものである。ここではSUS304及びSS400基材に、Cr3C2およびWC−12Co粉末を超高速ガス炎溶射(HP/HVOF)し、皮膜の耐エロージョン性、耐キャビテーション性、密着性、残留応力特性等を調べた。高速土砂噴流水によるエロージョン損傷量は衝突角度が大きい場合に多く、低角度側では少ない傾向が見られた。磁歪振動式キャビテーション試験による損傷試験では、皮膜のキャビテーション損傷量は基材より少なく、その損傷形態は土砂噴流による繰返し疲労破壊が主因と考察された。さらに、耐久性向上のための皮膜特性のあり方を示し、とくに粉末製造からの組織制御方法などが説明された。
IJ-16-99
「Ni-Cu基ろうによるステンレス鋼ろう付継手の耐食性について」
日本発条(株) 斎藤慎二、茅本隆司、 東工大 恩澤忠男

 二種類のNi-Cu基ろう、Ni-Cu-Sn-SiろうとNi-Cu-Mn-Siろう、を開発した。これらのろうで重ね継手試験片を作製し、塩水噴霧試験と各種溶液への浸漬試験を行った。ろう付継手のせん断強度の試験前後の変化で耐食性の評価を試みた。その結果、これらのろうの耐食性はBNi-5には劣るものの、BNi-2とほぼ同等で、銀ろう(BAg-18)よりも優れた耐食性を有することが明らかになった。
一覧に戻る