第 63回界面接合研究委員会 2003年9月26日

1. 「工業用純Tiと純Niのマイクロスポットろう付」
東海大学 宮澤靖幸、有賀 正

 本研究では、マイクロスポットろう付により、TiとNiを接合し、ろう付性を明らかにする事を目的とした。母材には工業用純Ti2種と純Niを用いた。ろう材にはAg系、Cu-P系、Ni系の箔状ろう材とTi系積層ろう材を用いた。ろう付性は接合強度、組織観察、耐食性試験などで評価し、用いた全てのろう材で接合が可能である事を確認した。さらに、ろう付電流が接合強度に大きな影響を及ぼす事を確認した。最後に、腐食浸漬試験により、BAg8を用いた場合の耐食性を明らかとした。各水溶液に対する耐食性は、H2SO4水溶液、NaCl水溶液、HCl水溶液の順に低下した。

2.「水中A-TIG法の開発」
(株)東芝 坪井竜介、浅井 知、小川剛史、安田年廣
東芝
ITコントロールシステム(株)竹林弘之

 水中における亀裂補修溶接法として水中A-TIG法を開発した。本溶接法はフラックス複合ワイヤを用い、活性化フラックスをワイヤ側から供給し、水中でのA-TIG溶接を可能としている。活性化フラックスを用いた水中ならびに水圧環境下での溶接試験を実施し、いずれの環境下においても深い溶込みが得られることが確認できた。

3. 特別講演
 「『ぬれ』の動的原子素過程に関する最近の研究成果」

名古屋工業大学 田中俊一郎

全ての溶融加工法の基礎である、固体への「ぬれ」現象の原子素過程を解き明かすために行ってきた約20年間の研究をreviewした。実験的には、透過電子顕微鏡の高温ステージ上で行ったSiC極性面へのTi系活性金属ぬれ直視実験で、SiC溶解・TiCの核生成・成長の原子素過程が明らかになり界面ナノ構造との相関がついたこと、「ぬれ」前面には1−2原子層のプリカーサが先行形成されること、などを明らかにした。さらに分子動力学計算と実格子ガス法を用いて「ぬれ」素過程をシミュレートする最近の試みを紹介した。

4.「ナノクラスターダイヤモンド分散アモルファスカーボン膜の超高真空中における潤滑性」

                                             東京工業大学 山崎 敬久

 超高真空中用固体潤滑剤として直径5nm程度のナノクラスターダイヤモンドを分散させたアモルファスカーボン膜が作製され、その潤滑性を超高真空中の原子間力顕微鏡のシリコン製カンチレバーによるスクラッチ試験にて調べた。目視観察では膜表面は鉛のような金属光沢をしており、その内部は透明であった。また膜の表面粗さは10nm程度と小さかった。膜の潤滑が良好な場合には一本のカンチレバーを用いてスクラッチできる長さは256mmであった。この膜は繰り返し20GPaの高い面圧でスクラッチされると、膜中から水素を放出して結晶化を起こし、圧縮応力の開放が引き起こされる。このことから表面の凹凸が大きくなり、潤滑性は徐々に失われた。


5.「レールガス圧接部の信頼性向上に関する検討」

    (財)鉄道総合技術研究所 深田康人、辰巳光正、山本隆一、上山且芳

 ガス圧接法は日本におけるレール溶接法の主流となっているが、人為的ミスにより不良ガス圧接部が形成される場合がある。そこで、レールガス圧接における脱技能化および更なる信頼性向上を目的に、加熱バーナの改良および加圧方式の変更に関する検討を行った。その結果、改良加熱バーナおよび加圧方式として従来の定圧法に代わる変圧法を組み合わせた新圧接方式を適用することで、突合せ部に多少の隙間が存在しても良好な圧接部を実現できることが明らかとなった。


6.「BPW:Braze Pressure Welding  −ろう材を利用した新しい高強度鋼管圧接技術−」

東京工業大学 鈴村暁男、池庄司敏孝、稲垣洋平
日本鋼管工事(株)上野泰弘

 ビル内配管用鋼管接続のための従来技術としては、アーク溶接継手、ねじ継手、フランジ継手、メカニカルジョイントなどがあるが、火災発生の危険性、技術者不足、性能のバラツキ、信頼性・耐久性不足など、種々の問題を抱えていることが説明された。そこで、接合部にインサートメタル(ろう材)を適用し、溶融インサートメタルにより接合面の清浄化を行い、その後、接合加圧力により溶融インサートメタルを接合面から排出する一方、接合面自体は加圧力により圧接(固相接合)される、という新しい圧接技術としてBPW接合技術を開発したことが報告された。接合面より排出された溶融インサートメタルは、接合部の外周及び内周に生じた目違いによる段差部分にフィレットを形成し、応力集中を緩和すると共に、流路の平滑化にも寄与することなどが説明された。

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