マイクロ接合研究委員会　第48回

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M J 　　第４８回　マイクロ接合研究委員会

			第４７回	第４９回

■ MJ-258-96・・・原子／分子から見たダイボンディングプロセスとその接合面の科学

大塚寛治(明星大学)

　現在のＬＳＩパッケ－ジは85％以上がリ－ドフレ－ムを使ったプラスチックモ－ルド・パッケ－ジであり、集積度の増大と共にチップサイズはますます大きくなる。15mm角の大きさもしばしば聞くようになった。このような大チップをダイ・ボンディングやモ－ルドを行っても材料力学上の問題が起こらないかを確認することにしたい。このように現行の技術を徹底的に科学することから延命策が生まれる。ダイ・ボンディングやモ－ルド後のパッケ－ジも積層板の一種と見ればチップサイズに関係なく設計は可能なようである。しかし現実には大チップでいろいろな問題に遭遇する。積層板の接合面に気泡が取り残されたり、剥離が起これば当然不良である。なぜ気泡が残るのか、なぜ剥離が起こるのか、接合面の強度とはどのようなことを意味するかその強度を改善するには何をすればよいか、シリコンチップは脆く壊れやすい。またエポキシとの接合も悪い。実はペレタイズにも大きな問題がある。このような問題を原子／分子レベルで解明する。

■ MJ-259-96・・・導電接着剤の最近の動向

窪田　規(㈱日本工業技術開発研究所)

　地球環境を汚染する鉛の公害を防止するためＰｂフリ－ソルダへの志向が世界的規模で検討されているが、その対応策の一選択肢として導電接着剤による電子回路の表面実装技術が注目され始めている。その背景には理想的な無洗浄化の達成があることも導電接着剤を検討するその他の有力な理由の一つである。導電接着剤の導電機構と接着機構は共に導電塗料のそれと共通であり技術思想に於いても大差はない。導電塗料は凡そ半世紀以上に及ぶ長い歴史を持っているが材料科学としての基礎が軟弱でノウハウの域を脱していない。そのため、信頼性を基礎とする材料特性を指標として現在の導電塗料を評価すると必ずしも十分とは言い難い。従来特定の電子部品に於ける用途に就いては導電塗料の使用が長い実績を持っているが、金属導体に替わって適用しようとする新たな用途に対して果たして十分使用できるか否かは甚だ疑問である。殊に導電接着剤に就いては金属などの非吸収面の相互接着が必要とされるから導電塗料とは別の新たな機能とその信頼性が求められる。本講では、導電フィラ－粒子の形態及び占容積とマトリックス樹脂の濡れ角が導体抵抗と接着強度に及ぼす影響に就いて行った検討結果から、導電接着特性に於ける材料の主要な問題点の所在をある程度定性的、定量的に示している。これらの資料から、導電塗料、導電接着剤に共通の導電機構と機械的接合機能に及ぼす材料因子を抽出し、これらを制御して必要とされる諸特性を材料の特質面から実現する材料設計の思想を示唆しようとしている。

■ MJ-260-96・・・無電解はんだめっき技術の開発と表面実装への適用

藤田　実，村井淳一，弘田　保，倉持敬一(三菱電機㈱)

　電子機器の小型・高機能化に伴い、プリント基板上に実装されるＬＳＩパッケ－ジも高多ピンで狭リ－ド端子ピッチの表面実装型パッケ－ジが主流となっている。接合面積の縮小やフラックスの低活性化が進むと接合不良が生じやすくなるため、基板表面のはんだ濡れ性が良いことが求められる。我々は、薄く均一なはんだ被覆をプリント基板の実装パッド表面に形成できる無電解はんだめっき技術を開発した。ピッチ間隔の狭いパッドでもブリッジなくはんだ皮膜を形成できる上に、接合金属と同じ金属（はんだ）の皮膜を形成する無電解はんだめっきは、実装上からは最も望ましいといえる。本講演では、無電解はんだめっき皮膜の表面実装に関する種々の特性についての検討結果を報告する。まず、無電解はんだめっきは、低活性フラックスを用いる場合でも各種の強制劣化試験後にはんだ濡れ性の低下を起こさず、良好なはんだ濡れ性が得られることを検証した。次に、はんだ濡れ性劣化の誘因であると考えられる銅スズ金属間化合物層（Cu-Sn層）の成長挙動について調べた。無電解はんだめっきの Cu-Sn層は他のはんだ膜形成法に比べ厚いが、熱履歴による成長は少ないことがわかった。初期に形成されているCu-Sn層厚さとCu-Sn層の理論的な成長挙動の関係について仮説を立て、この理論成長曲線が実測値とよく一致することを確認した。無電解はんだめっき厚さは ±2～3μｍで制御できる。従って、Cu-Sn層が表面に露出しない厚さに皮膜を形成すれば、熱履歴による Cu-Sn層の成長が少ないので、強制劣化試験によってもはんだ濡れ性の劣化が起こらないものと考えられる。

■ MJ-261-96・・・Ｓｎ－Ａｇ共晶はんだとＣｕの接合界面の微細組織と強度

菅沼克昭(大阪大学)，中村義一(防衛大学)

　鉛の環境汚染問題からはんだの鉛フリ－化が急務となっているが、特性及び経済的理由から新しいはんだのベ－スとなる金属はほぼSnに限られ、これに Ag,Bi,Zn,In等の２元系、３元系合金化が検討されている。中でも Sn-Ag系はんだは機械的特性に優れ、有力な代替材料の一つと考えられている。過去の報告では、Sn-Ag-Zn(2)、Sn-Ag-Bi(3)などのSn-Ag２元系をベ－スとするはんだは、Cuに対するぬれ性が良好で、しかもはんだ自体の強度やクリ－プ特性が優れており、はんだ付部品の信頼性も高くなると報告されている。ところが、これらのはんだ自身の微細組織も未だに明らかにされておらず、Cuとの界面状態や、その微細組織と強度特性との関連などはほとんど知られていないのが現状である。本研究では、Pbフリ－はんだとしてのSn-Ag系合金の可能性を調べるため、純Sn,Sn-Pb共晶はんだとの比較をしながら、Cu と Sn-Ag ２元共晶合金の接合界面の微細組織と界面強度の関連を明らかにする。特に、界面組織と強度との関連を明確にさせるため、原料には比較的高純度の材料を用い、はんだ付は真空中で行った。同時に、主にＴＥＭ観察によってSn-Ag共晶はんだ自身の微細組織を明らかにすることも目的の一つとした。

■ MJ-262-96・・・半導体の低発塵ＣＶＤ技術の開発

草壁嘉彦，花岡建一，古森秀樹，大西　寛，山西健一郎(三菱電機㈱)

　低発塵ＣＶＤ技術の開発を目的とし、Si3N4 膜形成プロセスにおける発塵源形成（成膜）メカニズムの解析を行った。第一に、従来の反応メカニズムでは説明できなかった、バッチ炉のガス導入部（低温部）等での発塵源（反応副生成物）形成に関して検討した。検討の結果、SiH2Cl2とNH3は混合するだけで反応し、混合部に白色の物質（ NH4Cl と Si系化合物の混合物）が形成されることがわかった。第二に、SiH2Cl2 と NH3 の混合ガスを用いた実験系において、インプロセス計測により成膜前駆体を評価しその発塵源形成に関して検討した。インプロセス計測の結果、SiH2Cl2 と NH3 の混合反応により、Si-H、N-H とともに Si-N の結合を有する付着確率の小さい（2×10-6程度）成膜前駆体 SiNHxが形成されることがわかった。以上の結果から、発塵源形成（成膜）メカニズムは次式
　　SiH2Cl2 ＋ 3NH3 → SiNHx（X=3の場合）＋　2NH4Cl．
　　3SiNHx（X=3の場合）＋ NH3 → Si3N4 ＋ 6H2．
で示されると考えられ、付着確率の小さいSiNHx は気化しにくい発塵源(膜、反応副生成物）を形成しない成膜前駆体として有望であることが明らかとなった。

■ MJ-263-96・・・表面活性化接合技術によるマイクロ部品の接合・組立

佐々木康彦，河野顕臣，小出　昇，有働竜二郎(㈱日立製作所)

　表面活性化接合法は清浄な面同士を原子間距離程度に近づけると自由電子のやり取りにより金属結合が生じるという原理を利用したものである。一般に物質の表面には酸化皮膜や水分、油脂などで汚染されており、これらの汚染層が接合面に存在すると接合の妨げとなる。そこで、Ａｒイオンあるいは原子の照射により接合面上の汚染層を除去して清浄化を行い、接合面が再び汚染する前に清浄化した接合面同士を加圧により密着させることで、低い温度での接合が可能となる。本研究では、マイクロマシニングを用いて製作したマイクロ部品をウエハスケ－ルで表面活性化接合することを目的として、４インチウエハの接合を可能とする表面活性化接合実験装置を開発した。本接合装置は大面積の活性化領域を得るためにＥＣＲイオン源を装備し、接合面の再汚染防止のためにマルチチャンバ方式を採用した。また、大面積の接合面密着を達成するためにロ－ラ－による加圧機構を備えている。本接合装置を用いてウエハスケ－ルの表面活性化接合について検討を行った。まず、ウエハの接合面にインサ－ト材としてＩｎ－Ｐｂ膜を形成し、接合条件をＩｎ－Ｐｂエッチング量：10nm,接合温度：140℃,接合圧力,2～10MPaとして結合した。その結果、接合圧力の増加に伴い接合強度も増加し、接合圧力：10MPa のときの値は５MPa以上である。さらに、積層方向の寸法ばらつき(±5μm)のあるマイクロバルブの部品を形成したウエハの接合を行った結果、インサ－ト材の厚さを 15μmとすることによりばらつきを吸収し、マイクロバルブを組み立てるのに有効であることが確認できた。

平成8年度配布資料一覧

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