マイクロ接合研究委員会　第51回

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M J 　　第５１回　マイクロ接合研究委員会

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■ MJ-282-97・・・Pbフリー半田材料の液滴法による動的濡れ挙動の解析　　

早坂裕二(宇宙開発機構事業団)，岩井正行，吉田　倫(㈱エイ･イー･エス)

　電子機器の回路実装に用いられる半田材料として、地球環境保全の観点から検討が進められているＰｂフリ－半田材料の基礎的な濡れ特性の評価を行った。
　測定方法として押し出し液滴法を用い、溶融半田材料の押し出し量と押し出し孔径の影響も含めて、Ｐｂフリ－半田及びＳｎ－37ＰｂのＢＮ基板に対する接触角を比較評価した。Ｐｂフリ－半田として、Sn-2Cu-0.8Sb-0.2Ag、Sn-7.5Bi-2Ag-0.5Cu、Sn-7.5Bi-2Ag-0.5Cuの再溶解品の３試料を、比較材として、Sn-37Pb、Sn-37Pb（50ppmP添加品）の２試料を測定した。押し出し量は、液滴高さが１～３mmになる範囲で、押し出し孔径は0.3mmφと0.5mmφの条件で測定した。接触角の値は、液滴画像をパソコンに取り込み、液滴輪郭をラプラスの式に基づく理論曲線にカ－ブ・フィッティングさせて求めた。
　測定の結果、Ｓｎ-Ｃｕ系よりもＳｎ-Ｂｉ系の方が濡れ性は良く、Ｓｎ-Ｂｉ系はＳｎ-37Ｐｂと比較しても遜色のない濡れ挙動を示した。Ｓｎ-Ｂｉ系の再溶解品は更に濡れ性が良く、測定試料中最も低い接触角を示した。また、他の試料に比較して押し出し孔径の影響も少ないことから、Ｓｎ-Ｂｉ系の再溶解品は、従来欠点のひとつとされていたフロ－性が改善されていると推測できた。今回の評価結果が、Ｐｂフリ－半田材料の実用化へ向けての基礎デ－タとして参考にされることを期待する。宇宙開発事業団では現在、宇宙実験材料として用いられる半導体、金属・合金等と実験容器材との適合性評価を濡れ性測定によって行っており、今後も各種材料の濡れ性測定及びそれらのデ－タベ－ス化等に取り組んでいく予定である。

■ MJ-283-97・・・電気めっき法によるSn-Agはんだバンプの作製

（Mate'97優秀論文賞　記念講演)

新井　進(長野県精密工業試験場)

　鉛が人体に有害であることからはんだの鉛フリー化がエレクトロニクス実装分野において緊急の課題となっている。錫－銀合金は耐熱疲労特性に優れたはんだ材料であり、はんだの鉛フリー化にも対応した次世代のはんだ材料と考えられる。一方、電子機器の軽量化、高機能化の要求から高密度実装技術が不可欠となっており、ワイヤボンディングやＴＡＢによる接合方式からはんだバンプを用いた接合方式に移行しつつある。このはんだバンプの形成法の中でめっき法は一括成形が可能な量産的方法と考えられる。これらの現況を鑑み、電気めっき法による錫－銀はんだバンプの作製を検討した。先ず実用的な錫－銀合金めっき浴の検討を行い、非シアン系の錫－銀合金めっき浴を開発した。このめっき浴を用いてフォトリソグラフを併用した通常のバンプ作製工程で銅板上に錫－銀マイクロバンプを作製した。ストレートウォール型バンプは断面組成がほぼ均一であったが、茸型バンプでは茸の傘の部分で銀の濃度が高くなった。これはカソード面積の増大によるカソード電流密度の減少に起因すると考えられる。茸型バンプをウエットバックした結果、直径100μｍ、高さ70μｍのボール型バンプが得られた。ボール型バンプの断面分析の結果、巨大な金属間化合物（Ag3Sn）の存在が確認された。これはウェットバック時に初晶として析出するAg3Snが巨大成長したと考えられる。また、基板の銅板とバンプの界面に金属間化合物Cu6Sn5が熱拡散により生成していた。このため、茸型バンプ中の組成を共晶組成よりもやや錫リッチになるようにめっき条件を設定し、更に錫－銀めっきの前にニッケルめっきを施してから同様にボール型バンプを作製した。その結果バンプ内に巨大なAg3Snの結晶やCu6Sn5が認められない良好なマイクロバンプが形成できることが分かった。今後、組成、高さのばらつきを制御することが課題である。

■ MJ-284-97・・・イオン化蒸着法による有機薄膜形成

臼井博明(東京農業大学)

　有機薄膜材料・デバイス開発へのプロセス技術的アプローチとしてイオン化蒸着法による有機材料の薄膜化・デバイス化について報告する。まず結晶性薄膜の配向制御について、ペリレンテトラカルボン酸二無水物を用いて検討した結果、イオンの電流量とエネルギーを制御することによって分子配向性を改善できることが示された。次に発光材料の例としてアルミニウムキノリノール錯体の薄膜形成を行った結果、蒸着条件の制御によって膜中の不純物が減少し、その結果として蛍光特性が改善できることが示された。さらにこれを応用した電界発光素子の試作を行い、蒸着条件による特性の変化を検討した。素子構造はＩＴＯガラス／ポリビニルカルバゾール／アルミニウムキノリノール錯体／Ｍｇとした。
最後に、このような有機薄膜デバイスの特性を決める重要な要因となる電子注入金属電極のイオン化蒸着を試みた。Ｍｇ電極の蒸着に際して、有機層への直接のイオン照射による損傷を防ぐため、真空蒸着によるバッファー層を介してイオン化蒸着膜を積層する2段階蒸着を行った。その結果、50nm程度のバッファー層を介してイオン化蒸着することにより、損傷の影響なく素子の発光効率や寿命特性を改善できることが示された。輝度や効率などの発光特性を最適化する条件と、寿命特性を最適化する条件が異なることが見出されたが、これは前者が有機／金属の界面特性に関連し、後者が金属電極自体のバルク的特性に関連するためだと考えられ、成膜の過程で蒸着条件をきめ細かく制御できるイオン化蒸着法の利点を活用することができる。

■ MJ-285-97・・・MCM-L用ビルドアップ配線板

中川智郁(山梨アビオニクス㈱)

概要
　今回開発しましたＭＣＭ－Ｌ用ビルドアップ配線板は，感光性エポキシ樹脂を用いたビルドアップ工法により製造しており，ビアホールの小径化と配線の高密度化によりチップ間の配線距離を短縮し絶縁材の低誘電率化と併せ，信号伝播を高速化する事が可能です．また，オウリント配線板の材料及びビルドアップ工法により低価格が図れます．
　特徴
・最小回路幅５０μｍ，最小回路間隔５０μｍの微細配線により，高密度パターン形成が可能です．
・フォトビアホール形成により層間接続が可能となるため配線長の短縮が可能であり，かつパターン幅精度が高いため（σ＝２～３μｍ），回路の電気特性が向上します．
・配線の自由度が高いためパターン設計に要する時間が短縮され設計コストの低減が可能です．
　仕様
・最小回路幅　　　　　　：５０μｍ
・最小回路間隔　　　　　：５０μｍ
・最小フォトビアホール径：φ１５０μｍ
・最大層数　　　　　　　：８層（片側２層ビルドアップ）
・表面メッキ　　　　　　：ワイヤボンディング対応ソフト金メッキ

■ MJ-286-97・・・新高密度プリント版（Ｂ２itＴＭ）の電気的特性評価

島田　修，松村健一，安藤善康，園田義章，福岡義孝(㈱東芝)

　デバイス技術の進歩に対応するためには，ＬＳＩ間を電気的に接続する配線板にも高機能化が必要となる．ＬＳＩ間の信号遅延を短縮するためには，ＬＳＩ自体の高密度実装とそれを搭載する配線板の微細化・多層化などの配線の高密度化による配線収容数の増大，配線長の短縮が必要不可欠になる．
このような高密度配線基盤が，最近種々のシステム機器においてみられるようにな
ってきた。当社ではＢ２itＴＭ技術による配線板をこのような高機能配線板の１つととらえて開発を行った。
　層間バンプ接続法によるＢ２itＴＭ配線板の各種電気的特性をＩＶＨ配線板と比較しながら評価した。配線の特性インピーダンス、信号伝送特性、クロストークノイズを測定・評価したところ、従来のプリント配線板と同等の電気的特性が得られた。特性インピーダンスの制御及びクロストークノイズに関しては従来の配線板と同様に扱え、信号伝送特性に関してはＢ２itＴＭバンプの影響はほとんど無視できることがわかった。

■ MJ-287-97・・・被覆ワイヤボンディング技術の開発

金田　剛(㈱日立マイコンシステム)
渡辺　　宏，秋山雪治，坪崎邦宏，西村朝雄，西　邦彦(㈱日立製作所)

　ＬＳＩパッケージにおいては、チップの小型化と多ピン化に伴うボンディングパッド間隔の縮小とワイヤ長の増大によって、樹脂モールド時に隣接ワイヤ同士が接触しやすくなる傾向にある。著者らは、この問題を根本的に解決する手段として、互いに接触しても電気的に短絡しない被覆ワイヤを用いたボンディング技術の開発を進めてきた。本報告では高温でのワイヤ接触に対する絶縁信頼性とボンディングの連続性向上を目的として、まず種々の被覆膜の評価を行い、最適被覆膜の選定を行った。この結果、被覆膜として0.4μm厚耐熱ホルマールが最も優れた特性を有し、10万ワイヤ以上の連続ボンディング性が可能であること、また、この被覆ワイヤを用いて作製したパッケージは、ワイヤ接触部において十分な絶縁信頼性を有し、温度サイクル試験や高温高湿バイアス試験などの各種信頼度試験に対しても、不良発生のないことが確認された。

■ MJ-288-97・・・厚膜金ペーストにおける界面現象のいくつか

渡辺嘉伸，宮入正幸(田中金属工業㈱)

　厚膜ペーストは、回路作成の為に、銀ペースト、金ペースト、ガラスペーストなどの組み合わせで、使用される。要素としては、下地としてのセラミックス基板と金、銀、Pdなどの電極材とガラスの３つが存在する。それらの組み合わせにて、８００℃～９００℃という温度で、金属焼結とかガラスの溶融、金属のガラスへの溶解、ガラスとセラミックス基板との反応などが同時進行的に起きているわけである。その際、反応の駆動力の主役は界面エネルギィー及び濃度勾配なとであり、重力は殆ど影響を与えていない。今回は、厚膜ペーストの開発の過程で、経験した幾つかの界面現象を紹介する。
　１．金粒子／ガラス粒子の均一分散系においても、焼成中にガラスの基板への
移動が起こる。
　２．金属／ガラス界面、アルミナ基板／ガラス界面、金属／アルミナ基板界面が共存した状態で高温熱処理を受けると、界面エネルギーの差異によって、ガラスの特異な流動が観察される。
　３．厚膜回路において、金／銀の接合を行うときは金焼成膜に銀ペーストを印刷、焼成した方が、良好な接合が取れる。

■ MJ-289-97・・・マイクロ光造形法とポリマイクロマシン

生田幸士(名古屋大学)

　医用やバイオテクノロジ用のマイクロマシンにはマイクロパイプ、マイクロリアクターやマイクロ鉗子など立体的なマイクロ構造が不可欠である。このため現在主流のシリコン半導体技術の流用では実現困難な状態である。講演者らは紫外線硬化樹脂を硬化させては順次積み上げ任意の立体構造を作る光造形法の原理に着目した「マイクロ光造形法」を世界に先駆けて提案、開発してきた。市販の光造形装置では樹脂の硬化分解能は高々300μmであるため、紫外線照射系や制御装置だけでなく紫外線硬化樹脂をマイクロ加工用に新たに自作し、1992年に硬化分解能５μmの「IHプロセス」を実証した。その後、シリコンと結合したハイブリッド構造を効率よく作製するため、1995年にはマルチビーム硬化を行い大量生産可能なマイクロ光造形法「Mass-IHプロセス」に発展させ、1997年には硬化分解能２μmの「super-IHプロセス」まで至っている。
　1993年、マイクロ光造形法とシリコンプロセスの両者の長所を生かしたマイクロ化学分析装置として「マイクロ集積流体システム」（MIFS）を提案試作した。さらに1995年、これを化学マイクロマシンとして発展させた「化学集積回路」（化学IC）の基本概念を提案し、製作プロセス、マイクロアクチュエータ部やセンシンング部、マイクロ流体制御部などの基盤要素技術と、化学ICのシステム構成理論の構築など組織的な研究を行ってきた。

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