日時:平成7年 7月 7日(木)10:30〜17:00
場所:自動車会館
【主題 Pb フリ−ソルダ特集】
○ MJ-S-97-95 「ウェッティングバランス法による Sn-Ag-Bi 系
Pb
フリ−ソルダのぬれ特性の評価」
大阪大学 竹本 正、宮崎 誠、松縄 朗
帝京大学 堀 茂徳
Pbの使用規制により開発が急がれているPbフリーソルダの候補としてSn-Ag-Bi合金を選定し,そのぬれ性をウェッティングバランス試験機を用いて測定した.得られたぬれ曲線からぬれ時間,ぬれの張力,さらに表面張力の測定値から接触角を求めた.これらの結果および融点の観点から最適組成範囲を検討した.融点が従来のSn-37Pbはんだと同等で同じぬれ時間を得るためには作業温度を上げる必要があり,一方,同一作業温度におけるぬれ時間をSn-37Pbと同等とするためには,はんだの融点が低くなる.しかし,いずれのPbフリーソルダもSn-37Pbよりも接触角が大きくなり,同等の接触角を得るためにははんだへの元素添加,フラックスの改良,雰囲気制御などが必要であることがわかった.
○ MJ-S-98-95 「Sn-Ag-Bi系 Pb フリ−ソルダの引張変形挙動」
大阪大学 竹本 正、高橋昌宏、松縄 朗
三井金属鉱業(株) 二宮隆二
帝京大学 田井英男
ひずみ速度を変化させる引張試験法によりPbフリーソルダの候補合金であるSn-Ag-Bi合金のひずみ速度感受性指数,m値および機械的特性を求め,耐熱疲労特性を推定した.得られた結果を以下に要約する.
(1)鋳造材では,Biの5
%添加により引張強度は著しく増大し,伸びは急減した.時効後はいずれのBi量のはんだでも伸びが大幅に低下した.
(2)Bi添加PbフリーソルダはいずれもSn-3.5Agよりもひずみ0におけるm値が小さく,傾きkが大きい.特に,時効後Bi添加Pbフリーソルダの傾きkの値が負となるので,疲労クラックを生じやすいと考えられる.Bi量5
%以下での引張変形特性の改善が有効であることが示唆された.
○ MJ-S-99-95 「Pb フリ−はんだ SnAg はんだの各種特性」
(株)日立製作所 佐藤了平
近年、各種電子機器に多量に使用されるPb-Sn系はんだのPbの環境汚染が大きな社会問題になっている。特にアメリカでは法制化の動きが活発であり、Pbに代る新しいはんだ材料の開発が急務となっている。しかし、長年使用され、その信頼性もかなりなレベルまで保証されているPb-Sn系に代るはんだ材料の開発を行うには、安定したプロセスと同時に、信頼性に係る各種特性を評価し、使用に耐えられる様にする必要がある。本報告はPbフリ−ソルダの1つと考えられるSnAgはんだに着目し、かつはんだ材料としては最も厳しい特性が要求されるマイクロソルダリング(フリップチップ接続)への適用可能性を明らかにするため、はんだとして必要な特性と評価方法の考え方を明らかにしたものである。
○ MJ-S-100-95 「Pb フリ−はんだの開発」
三井金属鉱業(株) 二宮隆二、松永純一
ハリマ化成(株) 島 俊典、穴田隆昭
大阪大学 竹本 正
現在国内外で使用されているはんだの主流は6-4はんだと呼ばれるPb-Snの共晶合金である。昨今の地球環境問題等によりはんだ中のPbによる地下水の汚染が問題視されるようになってきた。これは電気回路基板などを廃棄した場合に起こる問題で、国内では産業廃棄物法の改正により自動車シュレッダ−ダストに対して1996年度により規制が掛けられることになっている。また、米国においては種々のPb産業に対して規制が掛けられてきているが、はんだ中のPbに対してもラベリング規制されようとしている。このような状況下においてPbフリ−はんだの必要性が高まっている。今回開発した合金はSn-Ag系の合金をベ−スにし低温共晶が存在しないように合金成分をコントロ−ルしてSn-Ag-Bi-Cu系合金(AllowH)並みの融点と共晶はんだ並みの強度特性を有している。開発はんだは共晶はんだに比べて融点は若干高いものの以下の点で優れている。
(1)
高温(150℃)で保持した場合の引張強度特性の劣化が小さい。
(2) ヒ−トサイクル(-40℃〜150℃)特性が優れている。
(3)
クリ−プ(100℃、150℃)特性が優れている。
今回開発したSn-Ag系はんだはその使用用途に応じて以下の2種類のはんだとした。開発品A(LFS-A):融点がSn-Ag-Bi-Bu系よりも約5℃高いものの、低温共晶が存在せず機械的性質のバランスが良い合金。
開発品B(LFS-B):融点はSn-Ag-Bi-Cu系とほぼ同じか若干低く、低温共晶が少し存在するもののSn-Ag-Bi-Cu系ほどではない。このため高温保持した場合の引張強度特性がSn-Ag-Bi-Cu系に比べて著しく改善されている。
○ MJ-S-101-95 「アロイ H ソルダ−ペ−スト使用法の提案と課題」
日本アルファメタルズ(株) 木田 等、角田睦晴
最近、Sn-Pb共晶はんだに代わるPbフリ−はんだとして、アロイH(Sn90-7.5Bi-2Ag-0.5Cu)が注目されている。今回は、その合金をソルダ−ペ−ストとして使用するにあたって以下の基本的な特性を評価検討した。
(1)作業性:然るべきフラックスの選定とメタルとの配合比が適性であれば、その流動特性とはんだボ−ルの状況は、そのフラックスを用いた共晶はんだの場合と同等の結果となる。
(2)接続強度:0.5mmピッチのQFPリ−ド部で初期値においては、共晶はんだと同等であるが、熱サイクル試験後に強度の劣化(40%減)が確認される。しかし、1608チップにその現象は確認されない。
(3)部品及び母材の表面処理の影響:Pb処理に対してはぬれが良くなく、はんだやSn処理はぬれが良い傾向にある。
(4)マイグレ−ション性:ソルダ−ペ−ストとしてのBCR試験と合金としてのウォ−タ−ドロップ試験より、そのマイグレ−ション性を確認しており、Sn-Pb共晶はんだと比較して遜色がない。
○ MJ-S-102-95 「Pb フリ−ソルダペ−ストの現状」
千住金属工業(株) 加藤力弥
Pbフリー合金としてベースをSnにすることはあらゆる面で合理的であり,このSnベース合金の物性,ぬれ性について対比し,Pbフリーソルダペーストの現状について説明された.
○ MJ-S-103-95 「Pb フリ−ソルダの使用性能と問題点」
松下電器産業(株) 村田敏一、野口博司
ワ−ルドワイドの視点から地球環境問題が叫ばれ、有害物質規制、特に、鉛規制が米国を中心に強く求められている。今回、米国で開発されたSn-Bi-Ag-Cu系の鉛フリ−ソルダを入手し、基板実装に使用した場合の性能、品質の問題を明確化し更にユ−ザが求める鉛フリ−ソルダを述べ今後を展望する。その結果、溶融温度が高く濡れ性が悪いなど問題点も多くあり、民生用機器には使用できない見込みである。このため、やはり溶融温度が現行のSn-Pbよりも10〜15℃程度のアップですむSn-Zn系が望ましい。一方、この問題は、部品、半導体更にプリント配線板を含むので、実装業界全体で取り組む問題であり、当面各企業での開発が中心となるが、最終的には、材料組成を統一する時期が到来するものと思われる。
○ MJ-S-104-95 「Pb フリ−ソルダの一般論と今後の課題」
大阪大学 竹本 正
電子機器の埋め立て廃棄に伴う有害物質流出の懸念により,Pb含有はんだの使用規制が検討されており,Sn−Pb共晶系はんだに代わるPbフリ−ソルダの検討が欧米を中心に盛んである.代替材料は融点の関係からSn基合金となること,それらの必要基本特性,現在までの研究状況,いくつかの候補合金系と特徴,問題点と今後クリアすべき課題などが述べられた.Sn系Pbフリ−ソルダの融点をSn−Pb共晶温度並みにするために添加する元素は安定な酸化物を形成するので,保護性雰囲気でのソルダリングが有効であり,今後は,プロセス,表面処理法,フラックスなど総合的に検討し,結果を集約していく必要がある.
○ MJ-S-105-95 「鉛フリ−はんだ開発の現状」
タルチン(株) 横井重己
はんだ中の鉛の有害性に関する環境保全対策の一環として、鉛フリ−はんだの開発が進められている。これまでに、その構成成分としては、本来のはんだ付けのメカニズムにうまく適合して、はんだ固有の濡れ性、強度、電気伝導性、熱伝導性あるいは熱安定性などが発揮され、かつ材料の観点から、環境的な問題がなく、資源として従来の鉛入りはんだの代用となるだけの十分な供給性があり、またコスト的にも使用可能なものを必要条件として種々検討されてきた。その具体的なものとしては、鉛に比べて環境への悪影響がほとんどないとされているSnをベ−スとするいくつかの合金系が挙げられているが、これらの合金系は単にその組成比を変化させただけでは、現在の電子業界に多用されている鉛入りはんだの代替品となり得るための必要条件を満足するものはなく、まだ実用レベルに達するまでに至っていない。
ここでは、この鉛入りはんだの代替品となる上で、懸案となっているSnに対する必須成分が何であるかについて、いくつかの金属元素を適量添加したSnベ−スはんだを試作し、実際のはんだ付け作業で必要とされるはんだ固有の濡れ性、耐酸化性、結晶組織の安定性などの特性評価を行って検証してみた。その結果、Snをベ−スにGeを微量添加したものは、そのままでは融点が高過ぎるが、はんだ固有の濡れ性や耐酸化性、結晶組織の熱安定性などの、基本的な特性面においては、現有の鉛入りはんだよりも優れた特性を発揮することを確認した。
|