日時:平成8年6月12日(水)10:30〜17:00
場所:自動車会館(東京 市ヶ谷)
【主題 ソルダリング工法の開発/ぬれ性評価】
○ MJS-111-96 「バンプ高さ制御機能付きフリップチップボンダ 」
(株)東芝 生産技術研究所 小松哲郎,安藤鉄男,久保哲也,芝田元二郎,池谷之宏
フリップチップ実装は、バンプ電極を介してICチップを直接基板に接続するためにベアチップの高密度実装に適している。一方で、ICチップおよび基板の熱膨張係数の差に起因するバンプへの熱応力・熱歪が発生し、熱疲労が問題である。この対策の一つに、バンプの高さを高くし、熱応力・熱歪を緩和する方法がある。今回、この緩和を目的に、ボンディングツ−ルの高さを制御することで、バンプ高さを制御できるフリップチップボンダを開発した。開発した装置は、ツ−ル加熱中のボンディングヘッドの熱膨張量を計測しツ−ル高さを補正することで、ツ−ルを任意の高さに±5μm精度で制御可能にした。また、位置合わせ精度は、7μm以下である。接合条件を適正化することで、この装置を用いて円柱形状などの任意のバンプ接合部を得ることができた。
○ MJS-112-96 「ワイヤボンド用チップを用いた狭ピッチフリップチップアタッチ実装法」
日本アイ・ビ−・エム(株) 電子回路部品技術
荘司郁夫,山田 毅,木村英夫
藤内伸一,折井靖光
市販のワイヤボンド用チップを樹脂系プリント基板上にフリップチップアタッチ接続するOMB/FCA( Other Metal
Bump/Flip Chip Attach )
実装技術を開発した。本方式では、チップ側に形成された金バンプと基板側に形成されたIn系はんだをリフロ−により接合させることにより接続を得る。基板側のはんだにIn系はんだを用いることにより従来のFCA接合部よりもより優れた熱疲労寿命値が得られた。更に、基板側のはんだに
In-Sn-Pb 三元はんだを用いると、金とはんだの境界部には Sn-Au 系ではなく In-Au 系の金属間化合物である AuIn2 が形成される。この Au-In 系の金属間化合物相は反応速度の速い
Au-Sn反応を抑制するバリヤ−層として働きAuの溶出によるはんだの脆化を防止し接続部の信頼性を高めていることがわかった。In-Sn-Pbはんだを用いたOMB/FCA実装方式を用いることにより複数の供給元からなる他品種チップによるMCM−L(Multi
Chip Module-Laminate)の構築を可能にした
○ MJS-113-96 「ソルダペ−スト印刷法によるBGAバンプ形成技術の開発」
日立テクノエンジニアリング(株) 開発研究所
三階春夫,岡田浩志
1.0〜1.5mmピッチBGAと0.3〜0.8mmピッチCSPを対象に、ソルダペースト印刷法によるバンプ形成について検討した。1.0〜1.5mmピッチBGAにおいては、バンプ高さではJEDECの規格(1.27,1.5mmピッチ:500〜700μm、1.0mmピッチ400〜600μm)を満足したが、バンプ高さが高くなると形成不良率も高くなることが判った。バンプ形成不良は、加熱されて染み出た過剰なフラックスによってソルダペーストが移動するため発生する。その対策として、リフロー条件、基板仕様及びソルダペーストの改良により不良率を減じられることが判った。また、ソルダレジストの仕様によっては不良が発生しない条件があるが、通常のレジストがパッド上に被った仕様では完全に不良を無くすことはできなかった。マスク治具を使用した方式では、バンプ形成不良が発生し難く、バンプ高さのばらつきも小さいことが判った。0.3〜0.8mmピッチCSPにおいては、バンプ高さの目標値(0.3mmピッチ:100μm、0.5mmピッチ:150μm、0.8mmピッチ:200μm)を満足することが判った。また、CSPはパッド径に対するバンプ高さの割合がBGAよりも小さいため、治具を用いないソルダペースト印刷法でも不良は発生せず、CSPのバンプ形成にはソルダペースト印刷法が適しているといえる。
○ MJS-114-96 「押し出し液滴法による濡れ性評価技術の開発」
宇宙開発事業団 宇宙環境利用システム本部
藤森義典,小西貴明,早坂祐二
宇宙環境を利用した材料実験では、微小重力による無対流、無沈降などの効果のため、非常に均一な組成や結晶構造をもった材料の製造が期待されている。宇宙開発事業団では、これら宇宙実験に必要な「共通実験技術」の開発を行っている。その一環として、実験材料と容器材の濡れ性評価技術の開発が位置付けられている。
固液間の接触角測定装置として、押し出し液滴法にコンピュ−タ−画像処理機能を付与した装置を開発した。押し出し液滴法は、試料をシリンダ−内で加熱溶融し、所定温度に到達後、溶融液滴を押し出しにより成長させて形成する。このため、静滴法に比べて酸化皮膜の影響を受けにくい利点がある。測定温度は最高1600℃、液滴の撮像は2台のCCDカメラで2方向から行う。この装置を用いて、各種金属・合金・半導体材料(Ga,Sb,Ag,GaAs…)と、セラミックス基板(BN,石英…)の接触角を測定してきた。また、測定条件として温度、雰囲気、液滴サイズ、基板穴径、基板面粗度、押し出し速度等の影響についても検討を行っている。
これまでの検討結果として次のことが判ってきた。接触角と液滴サイズとは正の相関がある。基板穴径の影響は、液滴サイズが大きくなるに従い少なくなる。雰囲気気体、基板面粗度も接触角に影響を及ぼす。温度、押し出し速度の影響はほとんど受けない。今後は、これらの結果を踏まえて液滴サイズ等の依存性を明確にすること、また、測定精度向上を目的とした装置の改良として酸素雰囲気制御系や撮像系光学システムの改良等を課題として検討を進めていく。
○ MJS-115-96 「メニスコグラフ法における接触角測定技術の開発 − 接触角計測システム −」
(株)豊田中央研究所 画像情報研究室
塚田敏彦,水野守倫,山田啓一
山本 新,高尾尚史,長谷川英雄
金属や鏡など表面が光沢を持つ鏡面物体の表面角度を非接触で計測する方式を開発した。この方法は、鏡面物体の表面で光が正反射する性質を利用している。異なる位置に配置した複数の光源と1台のTVカメラを用い、どの光源からの正反射光をTVカメラが受光しているかを調べ、光源とカメラの位置関係から表面の角度を計測する。表面の角度を高速かつ精度良く計測するために輝度比符号化光源と広ダイナミックレンジ視覚センサを開発した。輝度比符号化光源は、2通りの発光パタ−ンで対象物表面を照明する光源である。TVカメラで各発光パタ−ン毎に合計2回の撮像を行い、得られた反射光の強度比から光源の特定を行う。光源の特定に強度比を用いるため、対象物での表面反射率の違いによる影響を受けにくくなっている。広ダイナミックレンジ視覚センサは、露光条件が異なる2枚の画像を合成してダイナミックレンジを拡大するカメラである。これにより識別できる光源の明るさの幅が増し、計測角度精度が向上する。この方式と市販のメニスコグラフ試験機を組み合わせ、はんだ材料を評価するためのシステムを構築した。このシステムは、溶融状態のはんだに接合材を浸漬した際に、はんだ−接合材間にはたらく力と接触角の時間変化を計測するものである。接触角は、2mm×2mmの範囲の約10万点の角度を1点あたり±2゜の精度で毎秒5回の速さで計測できる。これにより、濡れ力、濡れ時間、接触角を同時に計測することが可能となり、はんだ濡れ性を総合的に信頼性高く評価できるようになった。
○
MJS-116-96 「雰囲気中ぬれ試験機の開発とその適用例」
大阪大学 接合科学研究所 竹本 正
新潟県工業技術総合研究所 平石 誠
大阪大学 大学院 宮崎 誠
大阪大学 接合科学研究所 松縄 朗
(株)レスカ 大澤義征
鉛の環境や人体に対する悪影響が問題視されている中で,Pbフリーソルダが注目されているが,一般にそのぬれ性は
Sn-Pb系はんだに比べ劣ると言われており,雰囲気制御ソルダリングの適用が不可欠であると思われる.本研究では,雰囲気中ぬれ試験機を開発し,これを用いて雰囲気中でのぬれ性ならびに各種特性を評価検討することを目的とした.試験機は,グローブボックス内にウェッティングバランス試験機を置き,内部全体を窒素ガスで置換することにより雰囲気の酸素濃度を制御するもので,酸素濃度を10
ppm以下に制御することが可能である.
はんだには Sn-37Pb (SP)とSn-3.5Ag-5Bi (SAB) :
Pbフリーソルダを,フラックスには活性力の異なるRAおよびRを用いた.低残さ化の可能性を検討するため,固形分濃度35%の原液フラックスとこれを希釈したものを試験に供した.ぬれ試験の結果,低固形分濃度フラックスを用いた場合,低酸素濃度雰囲気は良好なぬれ性の確保に有効であり,Pbフリーソルダの低残さ化も可能であることがわかった.雰囲気中の表面張力の測定値から接触角を算出した結果,低酸素濃度雰囲気では接触角が小さくなっており,低固形分濃度フラックスやPbフリーソルダを用いた場合にも本質的なぬれの改善がなされることがわかった.大気中でのブリッジ試験の結果,フラックスは活性力の低いRの方が,また固形分濃度が低いほどブリッジ発生率は高くなった.はんだではSPよりもSABの方が発生率は高く,はんだ浴温度が低いほどブリッジは多く発生した.一方,酸素濃度100
ppm雰囲気中では,ブリッジ発生率は0%となり,酸素濃度を低下させることによりブリッジの発生が抑制されることが定量的に評価できた.
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