ソルダリング分科会　第23回

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マイクロ接合研究委員会

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M J S　第２３回ソルダリング分科会

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　日時：平成９年７月３日（木）１０：３０～１６：４０
　場所：国立教育会館（東京　霞ヶ関）

【主題　マイクロソルダリングの新たな潮流と信頼性】

○ MJS-124-97 「炭化水素化合物を用いた無フラックスはんだ接続法の基礎研究」
　　　　　　　　　(株)デンソー　ＦＰプロ部　三宅　敏宏　　近藤　宏司
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小原　文雄　　奥村　　望
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今井　秀一

　電子製品の小型高密度化に伴い、微細電極の接続技術が重要な課題となってきている。本研究では、表示素子等の取り出し電極の接続において、ＦＰＣ（Flexible Printed Circuit）のはんだ接続法を検討した。はんだ付方法として、絶縁特性を劣化させるフラックスを使用しない接続技術の確立を目指した。具体的には、酸化膜溶解作用の無いアルカン類をはんだ被覆した接続端子間に介在させてはんだ付を試みた。その結果、アルカンの沸騰による体積膨張エネルギーによってはんだの酸化膜を物理的に破壊することで、はんだの清浄面の接触と流動を引き起こし、フラックスを用いた場合と同等の接続面積率が得られることを見出した。また、高温高湿度雰囲気下で隣り合う接続部間に電圧を印加する試験を実施し、絶縁抵抗の経時変化を調べた。その結果、フラックスを用いた隣合う接続部間では絶縁抵抗が低下する傾向があるのに対して、アルカンを用いた接続部間では低下が無いことがわかった。

○ MJS-125-97 「フラックスレスソルダリングプロセス」
　　　　　　(株)日立製作所　生産技術研究所　　　　　西川　　徹　　伊集院正仁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山田　　収　　原田　正英
　　　　　　(株)日立製作所　汎用コンピュータ事業部　田村　光範　　岩田　泰宏

　フロン規制に伴い、種々の新プロセスが開発されてきた。その中で、接続端子の微細、狭ピッチ化にも対応できる技術として、フラックスレスソルダリングプロセスを開発した。フラックスの作用（酸化物除去、清浄化、再酸化防止）を代替する手段として、アルゴン原子ビームによる表面清浄化と不活性雰囲気リフローによる再酸化防止からなるプロセスを検討した。はんだ表面の酸化膜を溶融時の体積膨張により破れるように制御することにより、良好な接続を得ることができる。但し、このドライプロセスでは、セルフアライメント良好な接続部を得るためには、フラックスプロセスと比較して高温長時間リフローが必要である。また、位置合せ後リフローまでの仮固定手段がないため、多数部品の一括リフローが困難であるという改善点が存在した。そこで、仮固定手段として、リフロー時に残さを残さないように蒸発し、接続部の電気化学的信頼性に影響を及ぼさない液体を用いることを考えた。そして、その液体に、弱い還元性をもつアルコール系の溶剤を用いることにより、仮固定と同時に、リフロー時の酸化物除去作用によるセルフアライメント性の向上が可能であることを明らかにした。これらのはんだ接続時の挙動を直接観察することのできる装置を開発し、本プロセスによる接続が、フラックスを用いた場合と同程度で、はんだ溶融後１０ｓ以内に完了することを示した。このプロセスを、大形計算機の部品接続に適用し、環境問題に対応するとともに、組立工数低減、生産設備のエネルギー削減等の低コスト化を実現した。

○ MJS-126-97 「Sn-3.5%Ag合金のぬれと疲労特性に及ぼす第３元素の影響」
　　　　　　　　　芝浦工業大学　大学院　　苅谷　義治　　船川　茂之
　　　　　　　　　芝浦工業大学　工学部　金属工学科　　　大塚　正久
　　　　　　　　　日本アルミット(株)　　　川口寅之輔　　小嶋　光夫
　　　　　　　　　真空理工(株)　　　　　　前園　明一

　無鉛はんだの開発に当たっては、現行プロセスを考慮し、 Sn-Pb共晶はんだと同程度の融点をもつはんだが必要である。このような無鉛はんだの候補材料としては、Sn-3.5mass%Ag、Sn-9mass%Zn、Sn-58mass%Biが考えられているが、融点、濡れ性、信頼性などの点でそれぞれ問題があり、そのままでは現行はんだの代替材とはなり難い。これら候補材の中で Sn-3.5mass%Agは疲労特性に優れ最も有力な無鉛はんだのベース合金として注目されている。
　他方、最近の電子機器は過酷な温度変動環境下で使用され、プリント基板、パッケージ、はんだ等の各構成部品の熱膨張係数の差から生じる熱疲労が問題となっている。そのため、疲労特性に優れた無鉛はんだが求められている。第３元素を添加による融点、濡れ性の改善とともに、疲労特性などの信頼性に与える添加元素の影響を十分に調査する必要がある。以上のような背景から、本研究では、代替材ベース合金として有力視されているSn-3.5mass%Ag合金の濡れと疲労特性に及ぼす添加元素の影響を調査した結果，下記の点を明らかにした。
1)　BiおよびIn含有量の増加に伴いSn-Ag系合金の濡れ時間は短縮される。これは BiとInの濃度が高いほど融点が低下するためと考えられる。
2) Sn-3.5%Ag にBiを添加することにより、強度は上昇するが伸びの著しい低下を招き、10mass%の添加により、引張強さが２倍、破断延性が 1/37となった。これはBiの固溶体強化作用に起因するものと考えられる。
3) Sn-3.5%Ag の疲労寿命は、現行はんだに比較し、約10倍優れるが、Biを添加すると寿命はその濃度とともに低下し、10%で約1/200まで減少する。
4)　Sn-Ag系はんだ合金で Sn-37Pb 合金以上の信頼性を確保するには、破断延性εｆが0.6以上必要である。

○ MJS-127-97 「Solderability Assessment BY SERA」
　　　　　　　　　サーマトロニクス貿易(株)　大阪営業所　　三谷　耕一

　現在に至るまで半田付け性に対する原因の追求は多くの研究者によって成し遂げられてきました。ＡＥＳやＸＰＳ等による分析によってある程度その原因が酸化膜の種類とその厚みによるものと判断されてきました。しかしながら同上の分析機器では酸化膜個々の同定とその厚みの解析は難しいものであり、且つ長時間を要してのものでした。
　今回発表のＳＥＲＡ法による酸化膜の分析はこれらの点において大きな改良がなされており、分析結果そのものも信頼性の高いものと判断致します。
　現在ではＳｎ－Ｐｂ、Ｃｕ、Ａｇ、Ｂｉ、Ｎｉ等多岐にわたった酸化膜測定に利用されています。

○ MJS-128-97 「部品用Pbフリーはんだの選定評価」
　　　　　　　　　(株)村田製作所　マテリアル事業部
　　　　　　　　　開発２部　開発１課　　　高岡　英清　　浜尾　正行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　前川　清隆

　Ｐｂフリーはんだの研究、開発が活発化しつつある。しかしその内容は、Ｓｎ－Ｐｂ共晶代替はんだに関する報告が殆どであり、電子部品に多用される高温はんだに関しては、Ｐｂ比率が多いにも関わらずほとんど評価がなされていないのが現状である。
　本研究では、電子部品で多用される高温Ｐｂフリーはんだを検討した。
　Ｐｂフリーはんだの問題点として、次の５項目が明確になった。
　　①第２元素を過剰添加すると接合強度が低下する。
　　②電極が喰われ易い。
　　③Ｂｉ添加系は疲労強度が劣化する危惧がある。
　　④耐熱性に限界が有る。
　　⑤ドロスが発生し易い。

○ MJS-129-97 「フリップチップ用各種はんだの信頼性」
　　　　　　　　　日本アイ・ビー・エム(株)　野洲事業所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　荘司　郁夫　　折井　靖光
　　　　　　　　　大阪大学　大学院　工学研究科　小林紘二郎

配線板上へのフリップチップ接合法が注目され実用化されている. 本方式では,熱応力緩和の目的で接合部に樹脂封止が施されるため,樹脂封止後の信頼性よりも封止前のインラインプロセス中で接合部の受ける熱応力が問題となる.そこで,本研究では, 樹脂系プリント配線板上にAuバンプと各種はんだ材を用いてPbフリーなフリップチップ接合部を形成し,接合部の熱疲労挙動および熱疲労寿命値を評価するために熱サイクル試験(0-100℃,3cycles/h)を行った. 同時に接合部の初期組織および破断組織観察を行い接合部に生成する金属間化合物等の生成相を同定した. 接合部の初期組織観察結果よりはんだ材にSn,Sn-3.5Agはんだを用いた場合には, はんだの溶融時間が数分程度となる一般的な表面実装工程で使用されるような接合条件下では接合部のほとんどがAu-Sn系の金属間化合物相に変化することが明らかになった. 従って, 金属間化合物相の生成に伴い接合部の融点も上昇するため，リワーク工程等を考慮する必要がある場合には実用は困難となる. 熱サイクル試験の結果からSn-richなはんだ材よりもIn-richなはんだ材のほうがより優れた熱疲労寿命値を示す傾向が見られた. 特に,今回の実験範囲においてはIn-48Snはんだが最も長寿命値を示した. 熱サイクル試験後の破断部観察結果より, 熱疲労寿命の劣るSn-rich系のはんだ材ではその破断モードのほとんどがはんだ材以外のチップ側のSiやAlにおけるクラックであるのに対し, 優れた熱疲労寿命値を示すIn系のはんだでは, はんだ材自身のクラックが破断モードの主モードであることが示された. 初期組織と破断部組織観察結果から, 熱疲労寿命に優れるIn系はんだでは熱サイクル試験中に生じる熱応力に対しはんだ材自身が変形し応力を緩和することにより優れた熱疲労寿命値を示すことが示唆された.

○ MJS-130-97 「表面クラックのあるフラックス残渣の絶縁劣化予測」
　　　　　　　　　オリンパス光学工業(株)　生産技術部　　　市川　克之
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　複合精密技術部　　瀬川　英建
　　　　　　　　　楠本化成(株)　システム製品開発部　　　　小林　吉一

　はんだ付け後のフラックス残渣は、反応・未反応の活性成分が樹脂成分に分散した複合材料である。特に、樹脂成分がロジン系物質の場合、フラックス残渣の表面にクラックが入り易い。クラックの入ったフラックス残渣は吸湿しやすく、結露時や多湿環境下では、イオンマイグレーションを引き起こす危険性がある。
イオンマイグレーションの基本メカニズムは水中での金属の電気化学反応と同じであるため、フラックス残渣の表面吸湿（吸湿表面の形成）がイオンマイグレーションを発生させる最大の原因となる。一方、表面に水分が吸着したフラックス残渣の誘電特性に注目すると、比較的低い周波数帯の交流電界中で誘電損失が起こる。
　そこで、本報告では、クラックの存在するフラックス残渣に対して、そのクラックがイオンマイグレーション発生の原因となる吸湿表面を形成するかどうかを、水の誘電損失を利用した誘電特性試験で判定した。また、誘電特性試験で「吸湿表面を形成する」と判定されたフラックス残渣が、実際にイオンマイグレーションの発生を加速することを結露サイクル試験により確認した。なお、検証評価には、活性剤への水分吸着の影響を避けるため、フラックスとしてＷＷロジンを用いた。また、市販ソルダペーストのフラックス残渣の評価も行った。

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