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M J S 第29回ソルダリング分科会
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日 時   平成12年 7月 7日 (金) 10:30〜17:00
場 所   自動車会館 (東京 市ヶ谷)

【主題 マイクロソルダリングにおける最近の評価法,検査法】

○ MJS-166-2000   「SP張力法を用いた鉛フリーソルダペーストの評価」
   沖電気工業(株)宮崎 誠
 近年,鉛の有毒性から,電子機器実装の分野において鉛を用いない鉛フリーはんだの実用化が進んで来ている.この鉛フリーはんだを実用するに際して,いくつかの問題点があるが,中でも,従来のSn-Pb共晶はんだと比較した際のぬれ性の劣化が懸念されている.このため,ぬれ性を定量的に評価することが重要となってきている.従来,ぬれ性の測定は,ウェッティングバランス法やぬれ広がり試験,グロビュール試験などの方法が用いられてきた.しかし,これらの測定法ではソルダペーストのぬれ性を直接測ることはできないことから,我々はソルダペーストのぬれ性を測定する方法としてSP張力法を提案し,鉛フリーはんだのソルダペーストのぬれ性を測定し,良好な測定結果を得ることができ,(1)鉛フリーソルダペーストのぬれ性の効果を様々なはんだ付条件において定量的に評価できることがわかった.(2)鉛フリーソルダペーストのぬれ性は,ソルダペーストの種類(組成,フラックス)および雰囲気の影響が大きいことがわかった.(3)ソルダペーストのぬれ性を評価する場合,SP張力法の評価基準であるぬれ上がり時間Δtとぬれ力Fとでは,同一組成のはんだの場合,Fの方が有効であることがわかった.(4)異なる金属組成を持つ合金に関しては,ぬれ性を判断するのにぬれ時間による評価も有効であった.(5)今回行ったソルダペーストのぬれ性評価は,実際のリフローはんだ付実装における外観試験結果とも良い一致を見せた.(6)鉛フリーはんだは,Sn-Pb共晶はんだと比較して異なるぬれ曲線が得られたことから,はんだ付条件によっては,リフロー時に不均一ぬれやディウェッティングを起こす可能性があることが報告された.



○ MJS-167-2000   「微小部分、鉛フリーはんだ接合過程の連続観察」
   山陽精工(株)平本 清,西室 将
 リフロー用鉛フリーはんだの開発が急速に進んでいるが、現在、中心的なSn-Ag-Cu-Bi系を例に取っても、濡れ性、接合強度、信頼性の全てを満足する組成の配合については、最終的に確定したものではないとのレポートもあり、鉛フリーはんだにおける金属組成の最適化は今後も開発を進めなければならない問題である。 すなわち、温度マ−ジンの少なくなった鉛フリ−はんだでは液相線、固相線の観察、はんだの濡れる過程や、濡れる速度の観察、固相線における鉛フリーはんだの挙動観察によって、金属組成として、添加金属の添加量の評価が可能となる。更に、鉛フリーはんだと電極材料の最適化、鉛フリーはんだと電極メッキの最適化、鉛フリーはんだとランドメッキ材料の最適化、鉛フリーはんだにおけるフラックスの最適化、などの問題点を解決しなければならない鉛フリーはんだにおいては、溶融時の過程や凝固時の過程を加熱および冷却中に観察する必要性が充分にあると考える。 そこで、今回は高温観察装置 SMT Scope SA-5000を用いて、メーカーが異なるSn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-3.3Ag-0.75Cu-2.8Biの濡れ性、溶融状態、凝固状態の比較観察と、鉛フリーはんだにも使用されるリペア用フラックスの昇温速度の違いによる活性状態の違いをそれぞれ上部と斜視で同時に観察した。この観察結果から、金属組成が同一と表記された鉛フリ−はんだでもメ−カ−が異なると、濡れ性及び液相線、固相線が異なることが確認できた。また、同一組成のフラックスであっても、昇温速度によってボイドが大量に発生す温度及び消滅する温度が著しく異なることが確認できたことが報告がなされた.



○ MJS-168-2000   「鉛フリーはんだの絶縁信頼性に対する水晶振動子マイクロバランス法による評価」
   宇都宮大学大学院 吉原 佐知雄,田中 浩和,中村 誠,植田 文崇,白樫 高史
 イオンマイグレーション(以下,マイグレーション)発生による絶縁劣化故障は古くから問題となっている.従来,マイグレーション評価方法は,絶縁抵抗値や誘電特性値などを測定し,絶縁体中のイオンをキャリアとする伝導電流変化や,析出物の析出距離による絶縁性変化などの電気的特性に着目して,マイグレーション発生の有無を評価しており,マイグレーション発生速度に大きく影響するアノード融解量,カソード析出量を定量的に測定はできない.これら金属電極の融解・析出を微量検出かつその場(in situ)測定する手法として,水晶振動子マイクロバランス法(Quarts Crystal Microbalance,以下QCM法と呼ぶ)は,有効な評価手法と考えられる.本研究では二元合金系の鉛フリーはんだ(Sn-Ag系,Sn-Bi系,Sn-Cu系,Sn-Zn系)にQCM法を適用し,従来のSn-Pb系はんだと比較し溶液中の溶存酸素の影響,電圧依存性,フラックスの影響を調べ,マイグレーション発生要因を検討し,(1)はんだは酸素消費型腐食であり,アノード融解量,カソード析出量は酸素濃度に比例し増加する.また,溶存酸素存在下では,Sn-Pb系と比較して鉛フリー系は,マイグレーション成長による短絡時間は長く,アノード融解量,カソード析出量が減少傾向にある.このことは,鉛フリーはんだが,安定な不働態皮膜を形成したことによると考えられる.(2)Sn-Pb系はんだのカソード側の析出物はPb成分であり,Pbの不働態粋はSnと比較し狭く安定性が低いため,Pb成分が優先的に融解,析出したと考えられる.一方,鉛フリーはんだのカソード側の析出物はSn成分であり,合金成分の電極電位差によるSnの選択融解と酸化物形成による.このことより,主成分がSnである鉛フリーはんだは,電極表面に形成したSn酸化皮膜が安定な不働態皮膜となり,合金成分のアノード融解を抑制したと考えられる.(3)はんだのマイグレーション成長は電圧依存性があり,特にSn-Zn系は大きな変動を示す.また,RAフラックス溶液中では,アノード融解量,カソード析出量は増加し,RMAフラックス溶液中では,アノード側にて重量増加傾向を示す.このことは,フラックス成分のハロゲンイオンや有機酸によって参加皮膜形成能力や密着性を低下させたことによりアノード融解を促進し,また,RMAフラックス溶液中においては融解したイオンと錯体などを形成し沈殿したため重量増加したと考えられる.(4)以下のことより,二元合金系はんだのマイグレーション発生要因は,不働態域酸化皮膜の形成安定性に関係し,Sn-Pb系はんだに比較し,Snが主成分である鉛フリーはんだは,安定なSn酸化皮膜を形成するため耐マイグレーション性は高いと考えられる.しかしながら,印加電圧やフラックス残渣によるハロゲンイオン混入は,酸化皮膜の形成能力や密着性を低下させるため,実際の使用環境要因を十分に考慮し絶縁信頼性を確保する必要があるということが報告された.



○ MJS-169-2000   「超音波画像法による接合界面の検査技術」
   日立建機(株) 小倉 幸夫
 半導体パッケージや電子デバイス用シリコン貼り合わせ基板,スパッタリング用ターゲット材,炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料及びハニカム構造体などには接合技術が多く用いられている.これら接合界面にはく離やボイド(空洞)などのきずが内在すると,強度が低下したり電気特性が変化するなど悪影響を及ぼすことがあるので品質管理には十分な留意が必要である. 接合界面におけるきず検出のための非破壊検査手段としては,超音波を用いた画像技術が有効視され最近多用されている.超音波画像法によれば,接合界面での音響インピーダンスに基づく超音波の反射率に応じた二次元濃淡画像がリアルタイムで得られるので,きずの大きさ,形状及び分布状態などを迅速に定量評価することが可能であり,またX線検査など他の非破壊検査法に比べて微小隙間のきずの検出性に優れている. 本解説では,超音波画像法の原理,最新の画像装置の概要,半導体などの接合部への応用例及びきずの検出限界などについて述べ,以上,超音波画像技術の現状と接合界面における検査例及びきずの隙間やボイドの検出性について述べた.最新の高性能装置及び探触子を使用すれば,5nm程度のきずの隙間及び径10μm程度のボイドが検出可能である.今後,画像装置及び探触子の高周波数域での感度やSN比の向上,スキャナーの精度向上等ハードの改良,画像評価ソフトの開発及び最適超音波試験条件の追及等総合的な検討によって,更なる微小きずの検出性向上が図られるものと期待されることが報告された.



○ MJS-170-2000   「超音波によるBGA実装欠陥検査」
   東京都立大学大学院 諸貫 信行
 固体内を伝播する超音波を解析することで材料内の欠陥を検査することは古くから行われており,これを応用して固体接触部の状態(面圧分布)を求めることも試みられている.本研究では,この技術をBGA実装における素子と基板の間の接合欠陥検査に対しても適応することを試みている.最後には,本技術のCSP検査などへの拡張性についても述べ,その結果,超音波透過法を用いた実装検査法を提案し,可能性を検証した.今後,CSPへの適応を含めた適応限界を実験的に確認する必要があることが報告された.



○ MJS-171-2000   「レーザ照射型熱画像法によるマイクロ欠陥の同定」
   大阪大学大学院 岩田 剛治,藤本 公三,仲田 周次
 近年エレクトロニクス産業の発展はめざましく,電子機器・部品などの生産規模及び技術を考えるとき,集積回路応用機器の規模の増加と高度化−高機能化・高信頼化−が要求されている.そこで、レーザ照射型熱画像法は,熱伝導に着目し,接合部を短時間急加熱したとき,接合部の内部状態の違いにより熱伝導,熱伝達の状態が異なることによって接合部表面の温度分布が変化するという現象に着目したものである.すなわち,マイクロ接合部表面をYAGレーザにより局部的に極短時間に急加熱し,それによる接合部表面の温度変化を熱画像として記録・解析し,接合部に存在する種々の接合部欠陥,接合部の構造の検出を行うものである.今回の報告では極微細構造物における種々の欠陥同定においてレーザ照射型熱画像法はその可能性があるが,今後の電子デバイス・実装部のさらなる微細化,複雑化に伴い主に、1.温度計測の時間分解能においては,入熱面と欠陥面が近接してきて欠陥による影響がより早期に出現することにより,それに対応した赤外線検出素子が必要になる、2.温度計測の空間分解能においては,温度計測原理からその限界が数ミクロン程度までしか出せないので,非接触温度計測法でより空間分解能の高く,高速応答性のある計測装置が必要になる、3.対象物体の複雑化により,温度分布変化の理解が非常に複雑になる、の3つの問題点があり,これらの問題が解決できれば,レーザ照射型熱画像法の適用範囲がさらに広がると考えられることが報告がされた.



○ MJS-172-2000   「X線CTを用いた検査技術」
   (株)島津製作所 関本 亮,亀川 正之,國 嘉夫,岸 武人,大西 修平,山田 勝男,枝廣 雅美
 X線による非破壊検査(Non-Destructive Inspection)は,金属,半導体,合成樹脂などの検査対象物の素材を問わず,またそれを分解したり切断したりすることがなく,内部状態を観察できる非常に利用価値が高い技術である.例えば,高い安全性が要求させる原子力分野の各種構造物や機械器具,さらには自動車用部品など大量生産・大量消費される製品をつくる産業分野でも,X線による非破壊検査が普及している. このX線非破壊検査は,近年,空間分解能が飛躍的に向上して,微細観察が可能になり,高度な発展を見せている. 本報告では,高エネルギー電子ビームを収束させ,ターゲットに照射することで,X線発生スポットを数ミクロン以下のレベルに絞り込み,飛躍的に空間分解能を向上させたマイクロフォーカスX線発生システムについて述べ,本システムを用いた産業用X線透視装置,X線CTスキャナー装置についても概説する.また,上記装置の応用として,半導体デバイスのBGA(Ball Grid Array),CSP(Chip Scale Package)等の実装部品解説や,バイオ・生物研究の実例を中心に述べる.その結果,マイクロフォーカスX線装置は,半導体,精密機器,バイオ等の分野で活発に応用展開がされてきている.さらに検査装置の枠を越えて利用分野は急速に広がりつつあり,今後の進展が期待されることが報告された.



○ MJS-173-2000   「X線による微小接合部の検査」
   メディエックステック(株) 山田 幸一
 BGAからCSPへ微小化が進む半導体のパッケージおよびその実装では,ますますX線検査装置による品質管理が重要になる.新しく開発されたCSPのはんだポール接合部の検査では,近い将来にバンプ径が30〜10μmまで小さくなり,また,バンプ部はX線を通しにくい鉛が含まれている.そのため,今の実装基板の検査に求められているX線装置は,高解像度で欠陥を映し出し,また照射能力も高いものが求められている. これらの課題を解決したマイクロフォーカスX線管が開発され,すでに多くのX線装置が使用されている.BGA/CSP用に開発されたマイクロフォーカスX線装置は,焦点寸法が2μm,または1μmのものがあり,焦点寸法2μmで4μm程度の欠陥を十分に撮像できる.また,検査には100KV〜130KVが必要とされるので,最大管電圧160KVのタイプが用意されている.この装置を使用してCSPの接合部を検査したところ,従来では難しかったサンプルから斜め方向からの撮影において,CSP実装の未接合(浮き)を撮影することができたことが報告された. 
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