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M J S 第32回ソルダリング分科会
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日 時   平成13年10月26日 (金) 10:30〜17:00
場 所   自動車会館 (東京 市ヶ谷)

【主題 鉛フリーはんだ接合に対応した基板の表面処理性】

○ MJS-189-2001 「無電解Ni-P/Sn-Ag系鉛フリーはんだ接合界面構造と力学的信頼性」
   芝浦工業大学 苅谷義治
   日本電気(株) 田中靖則
   奥野製薬工業(株) 中岸豊
   芝浦工業大学 大塚正久
 フィラメントへの選択析出めっきが可能で,且つ均一な皮膜が得られる無電解Ni-Pめっきはさまざまな利点を有し,広範囲な適用が期待される.しかしながら,無電解Ni-P上の微細はんだ接合部においては,しばし低い力学的信頼性を示し,接合界面構造の解明,および力学的特性との関連を明らかにすることが求められている.TEM観察の結果,その界面には,Ni-Sn化合物(N3Sn4など),Ni-P-Sn化合物およびP-ritchなNi-P化合物(N3Pなど)が形成されることが報告され,これら化合物層の形成と力学的特性の関連が解明されつつあるが,はんだ合金組成の違いによる界面構造の相違や,それらの速度論的解釈は不十分であり,さらなる研究が求められている.本研究では,はんだ材料として,Sn-3.5AgおよびSn-3.5Ag-0.5Cuを選択し,それらの界面構造,界面化合粒生成過程および力学的特性の相違について検討した.その結果、無電解Ni-PめっきとSn-3.5%AgおよびSn-3.5%Ag-0.5%Cuの接合界面の微細組織を観察し,その界面組織と力学的特性との関係を精査し,以下の結論を得た.無電解Ni/Sn-3.5Ag界面には,めっき側から結晶性のP-ritchなN3P層,Ni-P-Sn層およびNi3Sn4層が形成されるのに対し,無電解Ni-P/Sn-3.5Ag-0.5Cu界面には,Cu-Ni-P層,Cu-Ni-P-Sn層およびCu-Ni-Sn層が形成される.無電解Ni-P/Sn-3.5Ag-0.5Cu界面に生成するP-ritchなCu-Ni-P層およびCu-Ni-Sn層は,それぞれ(Ni1-x,Cu)3Pおよび(Cu1-y,Niy)6Sn5であると予想され,P-ritch層はSn-3.5Agはんだの場合に比較し,極めて薄い.Sn-3.5AgにCuを添加することにより,P-ritch層の成長を1/5程度に抑制することができる.Sn-3.5AgへのCu添加は,無電解Ni-Pめっき接合体の強度を電解Ni接合体レベルまで改善する.これは,Cu添加により接合界面に(Cu1-y,Niy)6Sn5層が形成し,Sn-3.5Ag接合体観察されたP-ritchな化合物層上部での破壊が抑制されたためであると思われることが報告された.



○ MJS-190-2001 「鉛フリーソルダとAuコート無電解Ni-Pめっきの接合界面と信頼性」
   (株)東レリサーチセンター 伊藤元剛,吉川正雄
   大阪大学大学院 廣瀬明夫,小林紘二郎
 はんだとNiメッキ銅基板との接合において、ぬれ性の向上のために、Auプレコート層を付与することが行われている.しかしながら、過剰なAuはハンダとの接合強度に悪影響を及ぼすことが知られている。しかしながら、はんだとNiメッキ銅基板と接合界面にAuが及ぼす影響については、詳細に調べられていない。そこで、我々は、代表的なPbフリーはんだであるSn-Agはんだと、電解Niメッキ,無電解NiPめっきCu基板の接合界面の形成機構に及ぼすAuのコート厚の影響を調べた。Auコート厚がフラッシュメッキ程度の厚さ(〜50nm)の場合、ぬれ性の改善が認められるが、Auははんだ中に拡散し,界面の金属化合物の生成ならびに加熱時効による成長には影響を及ぼさない。一方、Auコートが厚い場合(150nm〜)には、接合初期において,Auを含む合金粒子がハンダ中に析出し、加熱時効により,ハンダ/Niメッキ界面にAuの偏析が生じ,Au-Sn-Ni層/Sn-Ni層の2層構成の反応層(金属間化合物層)を形成する。特にAuコート層が厚い場合(250〜300nm以上),電解Niメッキ,無電解Ni-Pメッキのどちらの基板においても,この様な反応層中にボイド列が発生した。これらのボイドの発生原因については,NiがSn-Ni層よりAu-Sn-Ni層側へ拡散することで,カーケンダル効果が生じ,ボイドが形成されたと推定される.上記のようにAuコート層が厚い場合には,加熱時効により,微小ではあるがボイドが形成されることが判明し,これにより接合強度の低下が示唆されることが報告された。



○ MJS-191-2001 「無電解Niめっき皮膜とはんだ接合界面の一考察」
   松下電子部品(株) 高瀬喜久,下山浩司
   (株)松下テクノリサーチ 村尾正子
   名古屋大学 虎沢直樹,坂公恭

 電子機器の小型,軽量化に伴いCSP,BGA等の採用が進む中でプリント配線板のはんだ付け部のランド径が小さくなり、はんだ接合部のはんだ接合強度の確保が大変重要になってきている。さらに、環境保全の面から従来広く採用されてきたSn-Pb共晶はんだに代わってPbフリーはんだの重要性が指摘されるようになってきている。しかし、Pbフリーはんだ自体あるいはその接合界面の解析に関する詳細な研究は少ない。そこで、Pbフリーはんだと無電界Ni/Auめっきとのはんだ接合強度の関係を調べ、はんだ接合界面の解析を行った。Pbフリーはんだとしては、Sn-Ag,Sn-Ag-Cuを用い、比較としてPb-Sn共晶はんだを用いた。無電界Niめっき膜としては低P、中P、高P-Niを用いはんだ接合強度を用いた。はんだボールプル強度としては低P>中P>高Pの順であり、はんだ材利用としてはSn-Ag-Cu>Sn-Ag≒Sn-Pb共晶であった。はんだ接合断面解析としては、SIM,TEM観察を行い元素分析はEDXを用いた。Sn-Ag及びSn-Pb共晶はんだではNi-P層とはんだの間にP-rich Ni-P層,Ni-Sn-P層,Ni-Sn層が確認された。また、Sn-Ag-CuはんだではNi-P層とはんだの間にP-rich Ni-P層,Ni-Sn-P-Cu層,Ni-Sn-Cu層が確認された。TEM観察によりP-rich Ni-P層は筋状のカーケンダルボイドからなり、またNi-Sn-P層あるいはSn-Ni-Cu-P層の上に球状のカーケンダルボイドが観察されたことが報告された。



○ MJS-192-2001 「鉛フリーはんだ接合に対応した複合型無電解Agめっき技術」
   エンソンジャパン(株) 斎藤 智
 近年の電子・電気機器のはんだ部品実装における状況は、機器の小型化・高機能化に伴いはんだ接合部分が小さくなりながら、従来以上のはんだ接合信頼性が求められている。さらに人体への影響から鉛フリーはんだによる部品実装への要求が強くなってきている。この状況の中でプリント配線板の表面処理技術も高接続信頼性・鉛フリー処理・低コストなどへの対応していかなくてはならない。開発した無電解銀めっき技術も、これらの要求に完全に対応するものである。従来の銀めっきでは電気特性的には優れた金属でありながら、マイグレーション・耐硫化劣化などの問題があり高接合信頼性確保には不充分であった。開発した無電解銀めっきは疎水性の有機化合物と同時に、連続的に銀とめっき析出させることにより、従来の問題点を完全に解決し、高接合信頼性を十分に確保するものである。鉛フリーはんだ実装においても十分に対応する。また、はんだ接合後はパッド表面を保護している銀と有機化合物は、はんだ中に拡散されるため、界面部分には存在せず錫−銅合金を形成するため安定した接合信頼性を確保することが出来る。この無電解銀めっきは水平搬送コンベアラインで処理する事を前提にプロセス設計されており、約10分の処理時間でプロセスが完了する。処理中の最高温度も約50℃と比較低温で処理が可能で、中性域で有機化合物との連続的めっき形成を行っていく。このめっき技術はHASL処理とも同等の耐熱性を有しているため、従来の基板に対して設計変更することも必要無く、完全に置き換えることが可能な技術である。最近の鉛フリーはんだ実装においても量産実績もあり、有望な基板表面処理技術であると言えることが報告された。



○ MJS-193-2001 「PWB用置換型銀めっきスターリングプロセス」<
   日本マグダーミッド(株) 長谷部昭彦, MacDermid,Incorporated,Donald P Cullen
 プリント配線板(PWB)の表面仕上げ処理では、ホットエアレベリング(HAL)、ニッケル/金めっき(電解、無電解)及びプリフラックス(OSP)などが主に使用されている。しかし近年、有害な物質の環境への排出の抑制、簡単で短い工程、コストの低減が要求されている。この様な背景のもとで、マクダーミッドが開発し、提案する手法が置換銀めっきスターリングプロセスである。このプロセスは、電気伝導性に優れ、銅よりも酸化還元電位が貴で、溶融したはんだの錫層中にすばやく拡散する特徴を持つ、銀を利用した置換銀めっきである。置換銀めっき表面仕上げ処理の性能であるが、耐熱試験、耐湿試験を行なった後でも、良好なはんだ濡れ性を持つ事が解っている。またはんだ接合強度についても、錫−銅金属間化合物が接合界面に形成され、従来の表面仕上げ処理に劣らない接合強度が得られる事が解っている。一方銀めっきを行なった場合に懸念される事として、マイグレーションの発生が上げられる。しかしマイグレーション試験を行なった結果では、この置換銀めっき表面仕上げ処理を行なった基板に、マイグレーションの発生は観察されていない。今回報告する置換銀めっき処理スターリングプロセスは、PWBの表面処理として、実装工程から求められるはんだ接合に関する項目、及び電気的な特性を満足する。そしてホットエアレベリング、無電解ニッケル置換金めっき及びプリフラックスと同様に、PWBの表面仕上げ処理として適用する事が可能であることが報告された。



○ MJS-194-2001 「鉛フリーはんだプリコート技術−ホットエアレベラ−」
   ソルダーコート(株) 杉浦 正洋,成田 雄彦,石黒 善伸
 現在、鉛フリー合金の組成はSn-3.0Ag-0.5Cuが主流である。しかし、この合金もSn-37Pbと比べるとぬれ性が悪く、融点が高いといった欠点がある。融点が高いため実装温度が高くなり、部品や基板にダメージを与える。一方、表面処理としてはプリフラックス処理が主流であるが、Sn-Ag-Cu系合金を使用した両面実装では、230度・20secの熱にさらされるため表面が酸化し、後工程でぬれ不良やぬれ上がり不足が発生している。 そこで、今回鉛フリーレベラの耐熱性に注目し、ぬれ不良対策として効果があるかの確認を行った。表面処理としてNi-Auフラッシュめっき、プリフラックス処理基板、Sn-3.0Ag-0.5Cuレベラの3種類を用いて、1回リフロー有り,無しの基板で評価した。 1回リフロー有り・無しに関わらず、レベラ処理・Ni/Auめっき処理品はランド印刷範囲以上に広がり、良好なぬれ性を示した。しかし、プリフラックス処理品はディウェッティング状態になりぬれ性が悪かった。以上のことから、両面リフロー基板を想定した場合はレベラ処理、Ni/Auめっき処理の必要がある。 また、同様の表面処理基板を用いて、フローはんだ付を実施した。リフロー評価と同様にレベラ基板では良好なぬれ上がりを示した。一方、プリフラックス基板ではぬれ上がりが悪いことが観察された。また、Ni/Auめっき品もプリフラックスと同様にぬれ上がりが悪かった。以上のことから、リフロー→フロー実装を想定した場合はレベラ処理の必要があることが報告された。



○ MJS-195-2001 「基板の表面仕上げの鉛フリーへの対応」
   メック(株) 岡田万佐夫
 プリント基板の表面仕上げには、ホットエアレベリング(HAL)処理やプリフラックス処理が広く採用されており、鉛フリー化への対応が求められている。 HALにおいては、はんだ未着、はんだ溶融温度の高温化、Sn/Zn系はんだの酸化等が挙げられる。はんだ未着や溶融温度の高温化に対しては、マイクロエッチング剤およびフラックス剤の検討、Sn/Zn系はんだの酸化に対しては、はんだ防錆剤の検討を行い、有効な結果を得られた。 一方、プリフラックスにおいては、はんだ濡れ拡がり性の確保が課題として挙げられ、鉛フリーはんだ用開発品の評価を行い、良好なはんだ濡れ拡がり性を確認できたことが報告された。



○ MJS-196-2001 「鉛フリーはんだに対する水溶性プリフラックスのはんだ付け性について」
   四国化成工業(株) 平尾浩彦,村井孝行,谷岡みや,菊川芳昌,吉岡隆
 近年、鉛による環境汚染問題が指摘され、エレクトロニクス製品の組み立てに長年にわたって使用されてきた鉛入り共晶はんだ(Sn/Pb系)に替わって鉛を全く含まない“鉛フリーはんだ”に切り替えようとする動きが急速に高まり、電子機器業界及び自動車機器業界が中心となり鉛フリーはんだの実用化に向けた技術検討が進められている。接合材料であるはんだが鉛フリー化になるに伴い、電子部品及びプリント基板の表面処理も鉛フリーに対応しなければエレクトロニクス製品としては鉛フリー化を実現したことにはならない。現在、はんだ及び電子部品の鉛フリー化に関する技術検討は活発に行われているものの、プリント基板の表面処理については十分検討されていない。今回、鉛フリー化に対するプリント基板の表面処理として弊社水溶性プリフラックス“タフエースF2(商品名)”を取り上げ、鉛フリーはんだ(Sn/Ag/Cu系、Sn/Zn系)に対するはんだ付け特性について調べた。タフエースF2でプリント基板を表面処理すると、銅表面上に0.2〜0.3μmの有機皮膜が形成される。この有機皮膜の熱分解開始温度は約350度であり、鉛フリーはんだ用の表面処理剤として十分な耐熱性を有している。また、タフエースF2により表面処理したものは、金メッキ、銀メッキ処理したものと比較すると、はんだ広がり性は劣るものの、はんだ揚がり性はほぼ同等レベル、接合強度は最も優れていることが判ったことが報告された。



○ MJS-197-2001 「鉛フリー対応水溶性耐熱プリフラックス」
   タムラ化研(株) 赤池信一,大野隆生,高橋義之,中波一貴
 プリント配線板の銅箔表面保護方法として、種々の保護方法が使用されているが、昨今の鉛規制や、VOC (揮発性有機化合物)の規制により、銅箔表面保護方法は大きく変化してきている。つまり、現在まで銅箔表面保護方法として主流であった樹脂系プリフラックスやはんだレベラーは、有機溶剤や鉛を含有している事から徐々に減少して行くことが予想される。この様な状況において、鉛フリーはんだ付に対応したプリント配線板の銅箔表面保護方法として水溶性耐熱プリフラックスに大きな期待が寄せられている。しかし、現状の水溶性耐熱プリフラックスでは、鉛フリー化によるリフロー条件の高温化、鉛フリーはんだ自体のぬれ性の低下により、十分なはんだ付性が得られないといった問題を抱えていた。今回、鉛フリーはんだ付に対応した高耐熱水溶性プリフラックスを開発したので、その特性を紹介すると共に、鉛フリーはんだ付における留意点を検討し、水溶性プリフラックスの耐熱性向上により、鉛フリー対応の高温プロファイルに対応することが可能となった。水溶性耐熱プリフラックスは銅箔表面に有機被膜を形成する保護方法であり、鉛フリーはんだの種類に影響されず使用することができる、はんだ付性の面では、金属被膜を形成する金めっきや鉛フリーはんだレベラーに劣る面もまだ見られるが、十分実用可能な性能を有するものと考えられることが報告された。
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