マイクロ接合研究委員会　第68回

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M J 　　第６８回　マイクロ接合研究委員会

			第６７回	第６９回

■ MJ-407-2002・・・最新のハロゲンフリー樹脂材料の開発

斎藤誠一（旭電化工業㈱）

　プリント基板用絶縁材について解説し、そのハロゲンフリー化についての手法や問題点、について、アデカBURシリーズの開発結果をもとに説明した。プリント基板用絶縁材については、基本的な構成成分を列挙し、従来のハロゲン含有型の処方と新しいハロゲンフリー処方とを比較した。ハロゲンフリー化の手法については、ハロゲンフリー系難燃剤の特徴を表にまとめ、りん系難燃剤による難燃化、金属水酸化物による難燃化と、それらの複合化による相乗効果の実験結果を報告した。りん系難燃剤については、分子内にエポキシ樹脂と反応する基を持たせる事で、ガラス転移温度(Tg)等の物性の劣化無く難燃性を付与できる事を報告した。水酸化アルミニウムについては、その樹脂への分散性が、難燃性や電気特性等の物性に影響を与える事を、オージェ電子分光分析(AES)での分散性の観察結果とUL94難燃性、及び走査型熱量計(DSC)による水酸化アルミニウムの熱分解挙動の結果から考察した。それらの結果を踏まえた実用的な配合処方を用い、プリント基板の信頼性評価を行った。信頼性評価は、-55⇔120℃のサーマルサイクル試験(TCT)と、130℃、85%RHの絶縁劣化試験(HAST)を行った。TCTは1000サイクルをクリヤし、HASTは150時間の試験後も抵抗値が1.0×10¹⁰（Ω）以上となり良好な結果を示した。更に安全性の試験として、燃焼時のダイオキシン類の分析と、りん酸エステルの分解生成物をＧＣマススペクトルで確認した。従来材料の燃焼ガスから臭素化ダイオキシンが定量されたのに対し、ハロゲンフリー材からのダイオキシン類の発生は殆ど無い事が判った。またりん酸エステルの分解生成物からも、毒性の強い分解物は発生しない事が判り、極めて安全性の高い材料である事が確認できた事が報告された。

■ MJ-408-2002・・・SBB方式フリップチップ実装における導電性接着剤接合技術

八木能彦，大谷博之（松下電器産業㈱）

　近年、携帯情報機器等の商品は、高機能化と共に小型・軽量・薄型化が求められ、これを実現する実装技術として、半導体のフリップチップ実装の重要度が増してきている。当社のSBB実装は、鉛フリーである導電性材料で接着するフリップチップ実装であり、特に接続信頼性の点で優れている。しかしながら、導電性接着による接合については、半田接合と比較して、一般的に接合メカニズムについての報告が少なかった。本報告では、導電性接着剤での接合界面解明と導電性接着材料設計及び高信頼性接合技術のポイントについて述べる。SBB方式フリップチップ実装においては、Agペーストの接着を安定させることが重要なポイントである。Agペーストの接着界面の解析により、接合部においては、接着剤を介してAgフィラーを接合させていることが確認できた。また、Agペースト中の接着材量については、接着剤添加量を抑えAgフィラーの重量%（F値）92に材料設計することで、封止後の信頼性を高めることが確認できた。また、量産においては、Agペースト接着を阻害する要因を抑えることで高品質な接合を得ることができることを確認した。この考え方をもとに、SBB方式フリップチップ実装を、超小型カメラモジュールやメモリーカード等に適用している。

■ MJ-409-2002・・・超音波フリップチップボンディング技術

冨岡泰造，井口知洋, 森　郁夫（㈱東芝）

　小型で少ピンのベアチップ上に金ボールバンプを形成し，これを基板の電極へ超音波併用熱圧着で直接接合するフリップチップボンディング方法とボンディング装置を開発した。接合実験では6ピンおよび11ピンのチップとセラミック基板とを用い，接合部材の仕様が接合性に与える影響を調べるとともに，荷重プロファイルの適正化による接合性向上を検討した。その結果，まず基板電極の金めっき厚さについては，バンプ変形およびバンプとチップ電極の接合強度には影響せず，めっき厚さの増加に従いバンプと基板電極の接合強度が増加した。次にバンプ形成状態については，強度が飽和する十分な接合がなされた場合，初期のバンプ形成状態はフリップチップボンディングの強度に影響を与えずバンプ形成の適正範囲が広いことがわかった。荷重プロファイルについては，ボンディング中の荷重を漸次増加させることにより，一定荷重の場合と比較して高い接合強度が得られることが明らかになった。また，軽量ボンディングヘッドや高精度な加圧制御，正確なチップ受け渡しにより安定したボンディングを高速に行えるフリップチップボンダを開発した。これら開発した技術はSAWデバイスへ量産適用した事が報告された。

■ MJ-410-2002・・・超音波フリップチップ接合におけるAu-Au接合メカニズムに関する研究

南　匡晃，清野伸弥，森本亮一，弘田実保(㈱村田製作所)

　超音波フリップチップ接合法を用いたAuバンプとAu電極の接合メカニズムを明確にするため、Auバンプ接合部の摩擦温度測定(実験1)とAuAu接合部の断面観察(実験2)を実施した。チップには1.8mm角Siチップ(Al電極,4バンプ)を、基板にはガラス基板(実験1)とSi基板(実験2)を用いた。（実験1）Auバンプが形成されたSiチップをAu膜上に超音波フリップチップ接合した際の接合部温度を薄膜型熱電対を用い測定した。その後、FEM非定常熱伝導解析を行うことでAuAu接合界面の温度を求めた。（実験2）接合直後および高温放置後のAuAu接合部断面のSIM,TEM観察を行なった。その結果、以下のことがわかった。（1）基板への定常加熱がない場合、超音波印加によるAuAu接合界面の温度上昇は微小であった。（2）接合直後のSIM,TEM観察から、AuAu接合はAu原子同士が直接会合した凝着状態であった。（3）高温放置試験後のAuAu接合界面のSIM観察から、凝着状態にあるAuAu接合界面に873K程度の熱エネルギを加えても界面は消失しなかった事が報告された。

■ MJ-411--2002・・・多ピン超音波フリップチップボンダーの開発

大口達也，中谷直人（日本アビオニクス㈱）

　フリップチップ実装は、高密度化、動作周波数の高速化、鉛フリーに有利な技術として着目されている。フリップチップ実装の方式には、はんだを用いたC4、異方性導電材料を用いたACF(ACP)、金－金に代表される金属接合工法など多様な方式がある。中でも超音波による金属接合工法は、低温・低加圧・短時間で接合出来る面で優れた工法である。　日本アビオニクス（株）では、このような超音波接続工法に注目し、研究試作、少量多品種生産を主用途とする超音波フリップチップボンダを開発した。本装置は、数百個のバンプを均一に同時変形させるために充分な荷重と装置剛性、荷重印加状態で安定した振幅を出力可能な超音波発振ユニット、急激なバンプ変形に合わせてヘッドを追従させる駆動機構、超音波の振幅および荷重をプロファイルとして自由に設定できる機能、バンプの狭ピッチ化に対応するための搭載精度を有しており、500バンプ程度の金－金超音波フリップチップ実装が可能となった。今回開発した多ピン超音波フリップチップボンダを用いて、その接合性と実装信頼性を評価した結果、次のことがわかった。（１）超音波ヘッドからチップへの振動伝達性は、ヘッドの振動速度、面圧力などに影響される。（２）接合強度はバンプ変形の進行と共に増加し、変形が止まると低下する。（３）フリップチップ実装における後工程の熱履歴を考慮すると、ビルドアップ基板を用いる場合には、バンプ当たり概ね0.5N以上の接合強度が必要である。（４）40kHzの振幅制御型超音波発振ユニットおよび荷重制御機能を有する超音波ボンダを使用して実装試作したサンプルは、1000サイクル以上の耐温度サイクル性を有する事が報告された。

■ MJ-412-2002・・・樹脂パッケージ用埋め込みキャパシターの開発

飯島隆廣，堀川泰愛，高野昭仁，六川昭雄（新光電気工業㈱）

　半導体デバイスの高速化により生じる、パッケージにおける電源やグランドの電圧変化の影響を小さくするために、キャパシターを半導体デバイスの近傍に実装する方法として、パッケージへキャパシターを埋め込む技術が検討されている。そこで、パッケージの平面、厚さ方向の接続長を短くし、半導体デバイスのパッドピッチに対応しデザインの自由度が高く、高誘電率かつ低損失な高誘電体材料を低温で樹脂パッケージに形成できる、陽極化成法による酸化タンタルキャパシターを検討した。陽極化成により高誘電体膜を形成することで、樹脂基板を損傷させることなく基板上にキャパシターを作製することができた。作製されたキャパシターは、膜厚制御が容易であり、フォトリソグラフィ技術により容量バラツキを少なくすることができた。得られた酸化タンタル層の比誘電率は21であり、その容量密度は68nF/cm2であった。ビルドアップ基板への埋め込みも行ったが、電極めっきにおいてリーク特性に課題があることがわかった事が報告された。

■ MJ-413-2002・・・熱履歴が鉛フリーはんだ接合部品質に与える影響

山口敦史，桜井大輔，平野正人，大谷博之，古澤彰男（松下電器産業㈱）

　現在，電気・電子機器に使われている環境負荷物質である鉛を含むはんだにかわる鉛を含まないはんだ（鉛フリーはんだ）の開発が世界中で取組まれている。松下電器において，1998年にポータブルMDプレーヤにおいて世界に先駆けて鉛フリーはんだの実用化に成功して以来3)，業界においてようやく鉛フリーはんだの実用化が進み出した。鉛フリーはんだは、その融点が鉛入りはんだより30～40℃高いので、はんだ付け温度が鉛入りはんだより高かった。そのため、はんだ付け温度が電子部品の耐熱温度以上になることがあり、電子部品を損傷させるという問題点を有していた。このことが鉛フリーはんだの実用化を妨げる最大の要因であった。そこでSn-Agはんだの融点を低下させるためにBiを添加し，接合強度等のトータルバランスを考慮したSn-Ag-Bi系はんだ，融点は高いが機械的特性に優れるSn-Ag-Cuはんだや融点は比較的低いがCuと高い反応性を呈するSn-Zn-Biはんだに対応する材料プロセス開発，設備開発，知的財産権の権利化等により実用化が急速に進んでいる。一方，従来の共晶はんだでは見られなかった鉛フリーはんだ接合特有の難しさも明らかになってきている。その一例に鉛フリーはんだ接合において，両面リフロー基板やリフロー/フロー混載基板において，２次面のはんだ付け時に１次面が再加熱される場合，接合品質が劣化する場合がある。このように加熱条件によっては，接合品質が劣化する現象が指摘されている。今回，鉛フリーはんだによる接合部の熱履歴が接合品質に与える影響について,この劣化メカニズムを明らかにし，劣化が生じる加熱条件，はんだ組成，部品表面処理の関係を接合界面現象の解析により明らかにした事が報告された。

平成14年度配布資料一覧

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