マイクロ接合研究委員会　第69回

社	団	溶接学会
法	人	溶接学会

マイクロ接合研究委員会

	発表資料一覧

	MJ賞

発表資料一覧

シンポジウム賞

M J 　　第６９回　マイクロ接合研究委員会

			第６８回	第７０回

■ MJ-414-2002・・・鉛フリーはんだの非定常クリープ解析

苅谷義治（(独)物質･材料研究機構）

　はんだ接合部の力学的信頼性解析においては，時間依存型のクリープが主たる変形機構となるため，クリープ構成式の導出が重要となる．はんだ合金のクリープ構成式としては，定常クリープ構成式が多く用いられている．しかし，多くのはんだ合金では，定常クリープは存在しないため，定常クリープ構成式を用いたクリープ挙動の解析は必ずしも適切とは言えない．このような場合のクリープを取り扱うには，最小クリープ速度のみならず，クリープ曲線の定量化が必要となる．本研究では，クリープ曲線を定量化する構成式として，改良q法を選択し，鉛フリーはんだの基本的な組成となるSn-3.5Agはんだ合金のクリープ曲線を解析した.改良q法を用いることにより，Sn-3.5Agのクリープ曲線を破断近傍に至るまで十分に良く再現できることがわかった．速度定数aと応力はべき乗則が成立し，最小ひずみ速度同様の応力指数を示す．速度定数aより求められる活性化エネルギーは，低応力側で約90kJ/mol（格子拡散律速）および高応力側で約65kJ/mol（転位芯拡散律速）であった．硬化のパラメータAは，応力のみに依存し，温度依存性を示さないが，弱化のパラメータBは，応力依存性およびアーレニウス型の温度依存性を示し，その活性化エネルギーは，約18kJ/molであった．はんだ合金のクリープ解析には，改良q法がきわめて有効な手段として推奨される事が報告された。

■ MJ-415-2002・・・半導体製造プロセスにおける帯電防止膜について

齋田義弘（昭和電工㈱）

　電子線（以下EB）描画過程は帯電が発生する。本プロセスの課題である大電流の高速描画を実現するには、高純度かつ高導電性の導電膜が求められている。そこで、KrFリソの延命を支えているフォトマスクの超解像技術の実現や半導体ウエハーの表面絶縁層及び多層加工におけるチャージアップ防止を実現する。その結果、大電流が照射される電子線描画過程におけるチャージアップ（帯電）防止には電子伝導性の材料が適している。その要求に合致する材料としてπ共役系導電性高分子が有効とわかったが、更に、導電性発現に外部からのドーピング操作を伴わず自らの側鎖でドーピングを行うセルフドープポリマーが最適とわかった。近年開発したチャージアップ防止剤（EB描画用の帯電防止剤：エスペイサー）は、セルフドープポリマー及び界面活性剤を含む組成物である。エスペイサーは、大別するとそのセルフドープポリマーの種類に基づき２種類に分けられるが、(1)高純度、(2)成膜性、(3)乾燥条件下でも安定な導電性、(4)均一水溶液、(5)除去が容易、等の共通する特徴がある事を明らかにした。最後に本稿は、半導体製造前工程における大電流のEB描画過程のチャージアップ防止に焦点を絞って論じてきた。一方、局部的に大電流を誘起する静電気処理も帯電にかかわる重要な問題の一つとなっている。今後、本チャージアップ防止剤が後工程を含め広範に荷電粒子の滞留に係るトラブル防止に貢献できれば幸いである事が報告された。

■ MJ-416-2002・・・プローブを用いた放電接合法の開発

今野武志，江頭　満，齋藤恭子，小林幹彦，新谷紀雄（物質・材料研究機構）

　本研究では微小な粒子の組み立て・微小構造体を作製するためのアセンブル装置を試作し、大気中でプローブと金属基板間の電圧を制御して静電気力による数十ミクロンオーダーの粒子1粒ずつの捕捉と配置、放電を利用した粒子の接合を行った。本発表は粒子操作・接合を行うための装置と手順を説明し、実験から得られた基本特性と接合強度について検討した結果について報告する。その結果、（１）プローブと金属基板間に20-50Vの電圧を印加すると、粒子がプローブ先端に吸着され、任意の位置に配置することが可能であった。（２）プローブと金属基板間に数kVを印加すると、プローブと基板間に放電が発生する。放電を利用した接合を行うと、粒子と基板あるいは粒子同士を接合できることがわかった。（３）Au粒子とAu基板の接合部の引張強度の測定を行った結果、窒素ガスを接合対象部に吹き付けながら接合を行うと、大気中で行うよりも破断荷重が約１桁大きくなった事が報告された。

■ MJ-417-2002・・・フリップチップ実装LSI向けボールバンプ形成技術の開発

枦山一郎，久保雅洋(日本電気㈱)

　マイクロボール化されたはんだボールは直径100um以下、精度±5um以下といった高精度品が開発されてきており、このような高精度マイクロボールを一括してLSIに搭載してフリップチップ実装用バンプを形成することが可能であれば、微細バンプ形成技術として有効な技術となると考えられる。しかしながら、従来のボール搭載方式ではマイクロボール化に伴う比表面積の増大により、静電気や吸湿による凝集の影響を強く受け、生産性の低下が著しくなっている。この対策として導電性液体中で静電気の影響を除去してマイクロボールを整列させる新プロセスを開発した。更に、液流でマイクロボールを整列させる方式によるボール整列装置、整列プレートからLSIにマイクロボールを移載するボール搭載装置の試作を行い、実用性の検証を行った。その結果、直径100umのはんだボールを用い、240umピッチ、約4000ピンといったLSIへのバンプ形成を実現すると共に、200um、100umピッチといった微細ピッチへの対応性を検証できた事が報告された。

■ MJ-418--2002・・・樹脂封止シートによるフリップチップ接合技術(ＮＳＤ工法)の開発

清水一路，西田一人（松下電器産業㈱），古口日出男（長岡技術科学大学）

　近年、携帯情報機器の小型化、軽量化が著しく進展しているためこれからの半導体実装技術には、1)基板反りが発生しやすい薄型基板への実装が容易、2)半導体、基板の微細配線化に伴い狭ピッチ接合可能、3)ローコスト化に対応であることが必要となってきている。　このような背景から、基板内に3次元配線可能で基板の小型、薄型、軽量化可能なALIVH(Any Layer Inner Via Hole)基板に、シート封止材とIC上にスタッドバンプを用いた圧接工法をNSD(Non Conductive Film Stud Bump Direct Interconnection)工法と命名し、開発し、ＡＬＩＶＨ基板での信頼性品質を確立した。その結果(1)ヒートサイクル試験(-55～125℃)1000cyc 以上、高温高湿試験（85℃,85%RH）1000 時間以上、吸湿リフロー試験5 回以上に耐えることを確認した。(2)ヒートサイクル時に発生する最大応力振幅と故障サイクルとの相関を見いだした。(3) 接続電気特性においても実用可能であることを確認し、ALIVH 基板へのＮＳＤ技術はMCM、CSP に広く応用できる可能性を実証した事が報告された。

■ MJ-419-2002・・・レーザによる急速加熱を利用した小型リレーの特性調整技術

北田耕作，朝日信行（松下電工㈱）

　超小型のメカニカルリレーを実現するため，レーザを用いてリレー接点バネの変位を非接触で調整する技術を開発した．IT関連のメカニカルリレーがますます小型化する中，スプリングバックの影響を受けないレーザフォーミングを適用した非接触曲げ加工のニーズが高まっている．しかし，メカニカルリレーに使われる銅系の接点バネは熱伝導率が高く，板厚が非常に薄いため,繰り返しレーザを照射すると残留応力の影響を受けて，曲げ制御が困難になり,他に表面が溶融するなどの問題が発生する．そこで，スプリングバックの影響を受けないレーザフォーミングの利点を活かして，変位量の計測とレーザのビームパスの位置制御を繰り返す手法を適用した．この結果，少ない照射回数で，表面に溶融のない接点バネの変位制御を実現した．これにより,非接触調整にレーザフォーミングを適用することが可能となる事が報告された。

■ MJ-420-2002・・・アルミニウムの接合技術と課題

橋本武典（昭和電工㈱）

　アルミニウム合金に関する種々の接合技術について紹介することによりマイクロ接合技術の課題について検討し、アルミニウム合金に対するマイクロ接合技術は、製品の小型化や寸法精度の向上、さらには接合強度の観点から以下のような問題点がある。１）局部加熱が困難、２）表面の強固な酸化皮膜の存在、３）熱により軟化する。（熱処理型アルミニウム合金の場合）。マイクロ接合では接合部が微細になるためにレーザを用いることが多い、しかしアルミニウム合金の場合には表面の酸化皮膜が最も重要な課題となるものと考える。この課題を解決するためには、機械的除去（研削、超音波接合、摩擦攪拌接合：表面の塑性変形）、電気的除去（ティグ、ミグ溶接：クリーニング作用）、化学的除去（ろう付け、はんだ付け：フラックス作用）を行っているのが現状である。今後は、これら技術の組み合わせや改良などが行われるとともに新たな接合方法を開発する必要がある事が報告された。

平成14年度配布資料一覧

　▲このページのTOPへ