マイクロ接合研究委員会　第64回

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M J 　　第６４回　マイクロ接合研究委員会

			第６２回	第６５回

■ MJ-380-2001・・・接合界面の熱伝導現象解析　　

根常幸，片山眞一郎,十時稔（㈱東レリサーチセンター），齋藤重正（富士電機㈱）

　半導体パッケージの熱設計は、小型・高機能化を進める上で不可欠な要素技術である。本稿ではパッケージ内部の熱伝導を支配する、(i)各構成部材の熱伝導率および(ii)各構成部材接合界面の熱抵抗に着目し、その評価法と測定例を紹介した。具体的に取り上げた試料は、(i)各種はんだにより接合されたSiチップとCu基板のはんだ接合層（厚さ数100μm）、(ii)Si-wafer上に作製されたSiO2薄膜（厚さ約50nm～約1000nm）である。はんだ接合層については、はんだ自体の熱伝導率から求めた熱抵抗推算値とはんだ接合層の熱抵抗実測値に差異が見られる場合があり、実際のパッケージにおいて、今後より精密な熱設計を進めるためには、実製品に近い状態の試料を評価する必要があることを示した。また、Si-wafer上に作製されたSiO2薄膜については、(i)作製条件の違いによる試料の微細構造の違いを反映し、同じSiO2薄膜でも熱伝導率が異なる場合があり、(ii)試料厚さが薄くなると実測される熱抵抗が推定値よりも大きくなり、素子の小型化を進めて行く際には、これらの点について注意を払う必要があることが報告された。

■ MJ-381-2001・・・パワー半導体素子のワイヤボンディング工程における応力解析

池田良成，辰川昌弘，梅垣　卓（㈱富士電機総合研究所）

　半導体デバイス製品において、高信頼性、高生産性を実現するためのはんだ付け、ワイヤボンディングと言った実装組立、パッケージング技術が重要な位置を占めて来ている。はんだ付け技術に関しては、鉛フリーはんだへの対応もあり多くの研究報告が行われているが、機械的負荷がかかりチップ不良の発生が心配されるボンディング時の研究は少ない。特にIGBT（Insulated Gate Bipolar Transistor）に代表されるパワー半導体素子に用いられている太線Alワイヤの超音波接合に関する応力解析の報告は少ない。本研究では、Alワイヤの太線化（>φ400μm）に対応する超音波接合技術を確立するために、超音波接合過程において、パワー半導体素子の表面に発生する応力について有限要素法（FEM）による解析を試みた。解析ではボンディング時の振動振幅に着目し、IGBTチップ表面構造の電極膜およびバリアメタルについて応力解析を実施した。そして、今回のFEM解析、ボンディング実験から以下のことが分かった。 1.超音波振動を強制変位とした応力解析より、ボンディング時の超音波振動振幅による応力集中が層間絶縁膜破壊（チップ不良）の要因であると推測できた。2.電極膜の厚膜化により、層間絶縁膜に発生する応力集中を緩和可能なことを示した。3.バリアメタルはボンディング時の応力緩和には効果がないことを示した。4.ワイヤボンディング実験より、電極膜を厚くすることで層間絶縁膜破壊が低減できることを確認した。5.今回仮定したFEM解析方法はパワー半導体素子のワイヤボンディング工程の応力解析に有効な手法であることを確認したことが報告された。

■ MJ-382-2001・・・フリップチップ接合のための超音波テクノロジ

戸来正康，玉本　修，青木保憲（日本エマソン㈱）

　超音波接合は、大別して４つのモード（縦振動、横振動、撓み振動、捻じり振動）が使われていてそれぞれ特徴があり、各種接合に使われている。半導体等のワイヤーボンディングには撓み振動の一つである棒撓み振動が使われている。最近の超音波フリップチップボンダーに搭載されている棒撓み振動モードでは、キャピラリの振動Ｚ成分が含まれている事から不適切ではないかと推測し、振動Ｚ成分を限りなく少なくした横振動モードのヘッド（ホーン＋ノーダルサポート）を研究開発した。有限要素分析法を駆使して開発したヘッドを元に、超音波フリップチップボンディングに必要な基本要素を以下のように特定推測出来た。1.ホーンのチップ接触面の振動Ｚ成分は無い事が望ましい。2.周波数は低い事が望ましい（チップ追従率が上がる方が望ましい）。3.荷重受けはホーンと同じ周波数で振動するノーダルサポートが必要。4.超音波振幅変化はチップ追従率を上下させる手法になり得るため、振幅プロファイルが有効。この振幅プロファイルの大前提は、負荷の有無に関わらずホーンのチップ接触面が一定振幅を保つ事が必要。以上の点に配慮することにより、超音波横振動を利用して多ピンフリップチップを、安定的に基板上に搭載する可能性が大となることが報告された。

■ MJ-383-2001・・・樹脂封止一括はんだフリップチップ接合技術

下川一生，小松哲郎，森　郁夫(㈱東芝)

　はんだバンプを用いたフリップチップ組立工程の生産性向上とコスト削減を目的として、リフロー工程においてはんだ接合と樹脂封止を一括して行うプロセスの開発を進めてきた。このプロセスでは、従来プロセスにおけるはんだ接合後のフラックス洗浄工程と樹脂の充填工程を削減でき、生産性向上を実現できる．使用する封止樹脂には、はんだ表面酸化膜の還元能力とリフロー工程での適正な硬化特性を持つことが要求されるが、その酸化膜還元メカニズムと良好なはんだ接合を得るための硬化特性は明確にされていない。今回、一般に酸化膜還元能力を有すると言われる酸無水物系エポキシ樹脂を用いて、硬化反応過程で生成するエポキシ樹脂の硬化剤との中間生成物ならびに、硬化促進剤と塩の状態で添加されている有機酸がカルボキシル基を有しており、これらが樹脂の酸化膜還元能力に寄与していることを明確にするとともに、樹脂の硬化特性として樹脂粘度を取り上げ、良好なはんだ濡れ性がはんだ融点での樹脂粘度が1000Pa・s以下で得られることを明らかにした。さらに、作製した樹脂で実装評価を行い、良好な初期接合性と実装信頼性が得られていることを確認したことが報告された。

■ MJ-384--2001・・・表面エネルギを評価指標としたはんだ付ブリッジの発生メカニズム

古本敦司，吉野　睦，杉浦光宏（㈱デンソー），安田清和（大阪大学）

　プリント基板製品は、年々高密度化が進んでいる。はんだ付においては、高密度化に伴い増加するブリッジなどの不良を如何に抑制するかが品質保持および製造コスト低減の観点から重要である。ブリッジ不良には、材料・設計・加工段階に様々な要因が存在する。従来は、これら各要因の効果を実験にて確認し、ブリッジの発生を抑制してきた。従って、交絡する要因の影響度合いは不明であり、定量的にブリッジの抑制方法を推定することは不可能であった。今回、プラトーの原理（＝液体は表面エネルギが最小値になるように形状を決定する）に基づく新たなブリッジの発生メカニズムを提唱した。このメカニズムは、同一のはんだ量において存在し得る２つの状態（＝ブリッジの有無）の表面エネルギを計算し、両者の曲線の交点からブリッジの発生領域を特定しようとするものである。メカニズムに基づき、２つの要因（設計寸法、はんだの表面張力）でブリッジの抑制方法を推定した。さらに、提唱したメカニズムを、従来知見の確認と実機との一致という２つの観点から検証したという報告がなされた。

■ MJ-385-2001・・・Sn-3Ag-Bi系はんだ接合部のフィレットリフティング現象に及ぼす合金組成の影響

高尾尚史，長谷川英雄（㈱豊田中央研究所）

　鉛フリーはんだのフローはんだ付においてリード部品のスルーホール接合部で発生するフィレットリフティングは、実用化に対する阻害要因になっている．本発表では、Sn-3Ag-Bi系合金のフィレットリフティングに及ぼすBi量の影響について接合界面の組織、合金の凝固挙動の観点から検討した結果をSn二元系合金の結果と併せて報告した。本実験により、以下の結果が得られた。(1) Sn-3Ag-Bi系はんだ接合部におけるフィレットリフティングは、10mass%Biまで発生率が増大した後、減少に転じ、30mass%Bi以上になると発生しなかった。このBi含有量に対して特異な依存性は、他のSn-X二元系合金（X=Bi, Pb, In）の場合と同様の傾向を示した。(2) フィレットリフティングの発生には、合金組成に起因する凝固特性、特に、最終凝固温度付近での潜熱放出量が支配的であった。すなわち、フィレットリフティングは、最終凝固温度付近での固相晶出量が少なく，接合部内の温度勾配を緩和するのに十分な潜熱が放出されないために発生すると考えられる。(3) 新たにフィレットリフティング予測指標(耐フィレットリフティング指数)を提案し、合金の冷却曲線の解析から求められるこの指数と発生率との間に良い相関が見られることを見いだした。これにより、電子部品や基板の電極材料およびめっき材料が接合部のはんだ中に溶解・混入することを想定して、接合部のはんだ組成範囲を見積り、その合金の凝固特性を評価するのみで、接合体を作製することなく、フィレットリフティングの発生予測が可能になった。(4) 接合部のはんだが凝固する際に、部品リード部を加熱し、接合部内の温度勾配を緩和することにより、フィレットリフティングを抑止できた。(5) 接合界面で生じるBiの濃化は、凝固偏析によるものではなく、合金中のSnとCuとの界面反応において、いずれとも反応しないBiが界面に取り残されたものであり、フィレットリフティングの発生原因ではないことがわかったとの報告がなされた。

■ MJ-386-2001・・・実装分野におけるFLOW-3Dの適用

宮本義弘（エス・イー・エイ）

　FLOW-3Dは、米国フローサイエンス社より非圧縮性、圧縮性を考慮した自由界面及び2流体界面を精度よく捕らえることのできる汎用3次元流動解析コードとしてリリースされて以来、複雑な流動計算に適用されている。種々の物理モデルの拡張及び、実験データと実測データとの比較検証が行われ、実装分野の解析を含め幅広い産業分野で有益な設計支援ツールとして使用されている。FLOW-3Dでは、FAVOR関数法を用いて幾何形状を記述し、VOF法を用いて界面形状を記述する。本講演では、基本的な機能として、固相状態から液相状態へ変化する過渡現象（溶融現象）、液相状態から固相状態へ変化する過渡現象（凝固現象）の検証テスト計算が示された。更に、表面実装の分野で重要な動的接触角についても記述する。実装問題への適用としてトランスファーモールド流動計算、はんだペーストの加熱溶融および凝固の過渡流動計算、デイップソルダー流動計算、および接着剤の線引き塗布計算等についての説明がなされ、FLOW-3Dの機能特徴と、実装分野に必要な計算モデルのテスト計算、実装問題への適用についての報告がなされた。

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