マイクロ接合研究委員会　第65回

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M J 　　第６５回　マイクロ接合研究委員会

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■ MJ-387-2001・・・微細構造物としてのＬＳＩ配線の破壊機構に関する研究

澁谷忠弘（横浜国立大学）

　寸法がミクロンオーダー以下の微細構造物においては，単一の微小欠陥の大きさが致命的なり，その発生・成長が破壊に直結することが大きな特徴である．多数の微小要素で構成れる微細構造物において，界面破壊は重要な破壊機構の一つである．異材界面においては，接する材料の材料定数が異なる為，界面上にはそれに起因した応力が発生する．とくに，面端部においては応力特異性が現れる場合があり破壊の起点となりやすい．一般に，微細造物は薄膜を積層させることにより作製される．このため，多層薄膜における界面強度を価することが重要となる．薄膜の界面はく離についての実験的評価法はいくつか提案されているが，力学的に適切な定量評価手法は確立されていない．とくに，サブミクロン膜厚の薄膜に対する界面の強度評法は，負荷制御が困難を極めるため報告例すらわずかである．さらに，はく離は界面端の異応力場により発生する場合が多いが，応力場が複雑になるため力学的に詳細に評価した例は皆無である．本研究では，界面破壊が近年問題となりつつあるサブミクロン薄膜を対象に界面強度評価の開発を行った．剛体棒を接合することにより膜の塑性変形および破断を防止した試験方を提案し，配線用Cu膜(Cu/TaN/SiO2/Si)に適用した結果，Cu/TaN界面端部からはく離さることに成功した．はく離発生は，界面端における応力特異性(特異性指数，l )に支配されおり，線形破壊力学の概念を拡張した界面端はく離じん性評価を行えることを示した．また，特異性指数を変えずに負荷方法が異なるはく離試験法を考案し，じん性値 Kf が負荷法に依らない一般的な破壊開始クライテリオンであることが報告された。

■ MJ-388-2001・・・ＣＳＰ搭載電子基板の落下シミュレーション

平田一郎，吉田裕一，森崎郁志（日本電気㈱）

　ＣＳＰ(Chip Size Package)は携帯電話等に必須のパッケージであるが、誤って落とすと、その衝撃でＣＳＰと電子基板との間のはんだ接続部にクラックが生じやすく、誤動作の原因となる。このため、関連する企業、大学においてＦＥＭ(Finite Element Method)シミュレーションを用いて携帯電話の落下挙動を解析し、耐衝撃特性を向上させる取り組みが盛んに行われている。本論文は、この落下解析手法として、従来、電子機器の落下に使用されていなかった陰解法の有効性を、新たに開発した落下試験装置による実験結果との整合を見ることにより明らかにした。また、解析結果によれば、はんだ接続部の耐衝撃特性は電子基板の質量低減により向上することが予測できたことが報告された。

■ MJ-389-2001・・・鉛フリーソルダペーストのぬれ性評価方法

原田　学（㈱マルコム）

　フローソルダリングの為のぬれ性評価法としてWB 法(ウェッティングバランス法)があるようにリフローソルダリングの為のぬれ性評価法をふたつ提案したい。ひとつはリフロー温度プロファイルの下でフィレットの形成過程を断面画像として撮影し、画像解析によってフィレット形状因子を算出する。つまりぬれ角、ぬれ高さ等である。この方法によれば、すでに一般的に実施されている見た目で評価する方法に近く、他のソルダペーストのぬれ性評価法の当否を判定する基準にもなり得る。この評価法を「フィレット画像解析法」とする。もうひとつはWB 法と同じくぬれ力を測定する方法で、ペーストと部品電極の間に働く作用力をリフロー過程と同じ状態で測定する。即ちペーストと部品電極を圧着してリフロー温度プロファイルで加熱する。そしてペーストが溶け始めてからぬれ終わるまでの作用力を測定する。しかし鉛フリーペーストによって本法は問題が発生している。それはペーストが溶け始めて、溶け終わっていないにも関わらずペーストと部品の間に強い引き力が発生する事である。溶けていないペーストの力であるからぬれ力とは異なる力と考えられる。しかもその強い引き力は、しばしばぬれ力の特性を包み隠してしまう。これを解決する方法について提案と実験を実施する。本法は「新SP 張力法」とし、「フィレット画像解析法」と合わせて利用する事で測定の信頼性を向上させる。又フィレット画像解析法によって得た評価が新SP 張力法の評価と相対的に一致するものであるならば、新SP 張力法自体の正当性を証明する事になると考えていることが報告された。

■ MJ-390-2001・・・鉛フリーはんだに対応したぬれ性試験器

安部可伸(安部実装研究所)

　現在我国電子工業界が世界に先駆け，鉛フリー化の導入を図っており，諸外国の注目を集めているが，一般にははんだ付け後の外観検査基準の変更も必要なほど，鉛フリーはんだはぬれ性に乏しい．従来からぬれ性は，はんだ付けにおいて最も重要な指標の１つであるが，鉛フリー化にともないリフロー温度の高温化，長時間化が避けられない状況になりつつある現在，より重要な問題となっていることから鉛フリーはんだのぬれ性についてフラックスの活性度の観点から検討を行いフラックスの加熱時間による影響度，すなわち高温におけるフラックスの活性持続時間が有益な指標であることが分かったことが報告された。

■ MJ-391--2001・・・電子部品のレーザ溶接

伊藤　弘(㈱東芝)

　これまで,レーザ溶接技術は,ブラウン管の電子銃，二次電池等の電気電子機器の新製品にあわせて技術開発がなされ，進歩してきた。電子銃の溶接には光ファイバ伝送という技術が適用され，二次電池の溶接には波形制御技術が新たに開発され用いられている。電子部品分野では，めまぐるしい速度で毎年新製品が開発され，製造されている。それに伴い，新しい加工技術も開発されている。レーザ装置の低価格化，高効率化も進んでおり，これまで導入の障害となっていた高価格，高ランニングコストという問題も解決されつつある。これにより，新しく開発される電子部品へのレーザ溶接への適用はますます広がると期待されるという報告がなされた。

■ MJ-392-2001・・・磁気ディスク装置製造におけるレーザの利用

松下直久，今門正幸，十倉史彦，牛丸明彦，古井寿一（㈱富士通）

　パーソナルコンピュータ／ディジタルカメラによる写真データ処理、ビデオテープに変わる映像記録といった膨大なディジタル情報の記録や、より緻密なナビゲーションが要求されるカーナビなどでは、大容量／高速転送の記憶装置が必要である。これらを実現する手段として磁気ディスク・ドライブ（ハードディスク・ドライブ、ＨＤＤ）が使われている。特に大容量化に対しては年率２倍の速さで高密度記録化が行われており、これに伴い使用する部材に対する精度要求は大変厳しいものとなっている。これらの要求を実現するため新しいレーザ加工技術や設備開発を行っている。本報告では、特に磁気ヘッド部材加工でのレーザ加工応用技術の紹介として、ＳＵＳ３０４薄板材のマイクロ・スポット溶接技術、レーザフォーミング技術を応用したサスペンション部材（ＳＵＳ）およびスライダ部材（セラミック）の形状修正技術等について報告がなされた。

■ MJ-393-2001・・・ＹＡＧレーザを用いた生体用ステンレス細線の微細溶接

小林紘二郎，上西啓介，関　正則（現　シャープ），国政武史（大阪大学）
　坪井昭彦，池田剛司（㈱ファインプロセス））

　ステントなど、生体用器具作製へのレーザ微細溶接の適用性を調べるために、SUS304細線のYAGレーザによるスポット溶接を行い、溶接部組織、継手強度及び耐食性に及ぼすレーザ条件の影響について調査した。次に、重ね溶接により十字継手を作製し、組織観察及び引張試験を行って最適なレーザ条件を見出した。線材のスポット溶接では、レーザ出力の初期の1msに発生するノイズを波形制御により低減することにより、パルス幅2msにおいて、最適条件域を広げることができた。溶接金属組織は、溶接条件に関わらずセルラーデンドライト組織を呈し、その粒界において少量のフェライトが確認された。引張強さは、熱処理により焼きなました母材以上の強度が得られた。生体類似環境を想定した生理食塩水による塩水浸漬試験の結果、良好な耐食性を有していた。十字継手部の断面形状は、下側の線材が全く溶融しない場合、半溶融状態の場合、完全溶融状態の場合の3つ大別することができた。良好な継手強度をもつ溶接継手作製には両線材を溶融させることが望ましいが、完全に溶融させると、溶け落ちを生じ易くなるため、レーザ溶接条件を選定する必要があることが明らかになったことが報告がなされた。

■ MJ-394-2001・・・ＹＡＧレーザを用いた生体用ステンレス細線の微細溶接

西山治巳（アマダエンジニアリングセンター）

　薄板板金市場におけるレーザ溶接の適用には、以下のような問題点がある。・レーザ溶接に必要なねらい精度が高いため、溶接線ずれ、隙間の影響を受けやすい・プログラムの作成（ティーチング）に時間がかかる。これらの問題点を解決するための要素技術として次の５項目について検討した．１．光学式ウイービング：光路上に傾けたガラス板を挿入し、回転させる装置。溶接ビード幅を増やせるため、狙い位置・隙間許容の拡大、ワイヤ溶融性の向上、ビード外観の向上等の効果があり，２．ホットワイヤ溶接フィラー：ワイヤとワーク間に電流を流し、加熱して溶融性を向上させる装置。溶け残り等の溶接不良が減るため、レーザ溶接にワイヤの適用がしやすくなり，３．溶接線補正ソフト：ＣＣＤカメラとパソコンでの画像処理により、実際の溶接線とプログラムとのずれを補正する装置。製品ごとのばらつきをソフトで補正し、段取り時間を短縮し，４．手動レーザ溶接機：手でトーチを持って、レーザ溶接を行なう装置。安全の確保と操作性との両立が重要であることが報告がされた。

平成13年度配布資料一覧

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